2025/7/13 09:51

マスコミが伝えない「備蓄米フィーバー」陰の部分

米

「おたくのスーパーには、あの安い備蓄米は入らないの?」

 常連さんからそう聞かれるたび、「うちの規模のスーパーには入荷しないんですよ」と答えるのが、なんとも心苦しい。目の前で“備蓄米フィーバー”が起きているのに、中小スーパーは、ただ黙って見ているしかありません。

メディアでは連日、「備蓄米を求めて大行列!」「2,000円のお米に歓喜!」などとにぎやかに報じられています。でもその陰で、“蚊帳の外”に置かれた多くの小さなスーパーの存在を、忘れてはいないでしょうか?

振り返れば2024年、記録的な猛暑と台風の影響で米の作柄が悪化。さらにインバウンド需要の高まりも重なって、お米の値段がじわじわと上がり始めました。5キロ3,000円だったコシヒカリなどの「銘柄米」が4,000円を超えてついに5,000円台へ。

こんな「令和の米騒動」がもう1年以上続いています。

スーパーマーケットファンより紹介します。

メディアは連日、「やっと手に入れたぞ!」とゲットした備蓄米を誇らしく掲げるお客さんの姿や、「安くて助かる」「思ったよりおいしい」という喜びの声を伝えます。徹夜で並ぶ方もいます。

 育ち盛りの子どもがいる家庭や年金暮らしの高齢者世帯では、「1家族1袋限り」の制限があっても、2,000円の備蓄米は家計の「救世主」となりました。

 一方、この「備蓄米フィーバー」では、決してマスコミが取り上げない「陰の部分」があります。

 5月26日から始まった「随意契約」に参加するには、「年間1万トン以上の取扱量がある業者」という高いハードルが設けられてしまったのです。この条件があまりにも厳しくて、「大手コンビニ」でさえ最初は参加できませんでした(現在は可能になりました)。

 つまり、「随意契約」に参加できるのは、あなたが知っている「有名大型スーパー」に限られ、地方に点在する「中小スーパー」は、「売りたくても仕入れることができない」という“蚊帳の外”に追いやられてしまいました。

 もし中小スーパーなのに備蓄米を売っているとしたら、それは「〇〇チェーン」や「〇〇グループ」として“束になって”条件をクリアした大型店傘下の企業です。

 SNS上では「もう備蓄米は普通に買える」などの声を聞く半面、「まだ備蓄米を見たこともない」など、地域によって大きな“格差”があります。どちらかといえば、都市部や大きな地方都市で、優先的に備蓄米が販売されているようにも感じます。

これまで主に地方や過疎地で地域の食生活を担ってきた「中小スーパー」は、大手スーパーが「備蓄米フィーバー」に沸く中、寂しい思いをしています。


 このような“小売りの腕の見せどころ”でもある非常事態に貢献できない“歯がゆさ”は、同じ立場にいた私には痛いほどわかります。

 「自分たちだって安い備蓄米を地域に届けたい!」この思いは、これから解消されていくのでしょうか? しかしいくら「随意契約」で取引しても“精米~袋詰め”を自社でできない以上、これまで通り、いつもの米問屋にすがるしかありません。

 自分の店で安い備蓄米を販売して、お客さんが喜ぶ姿を見ることは期待できないのでしょうか……。

 その頃にはこの「備蓄米フィーバー」は収束しているかもしれません。現在、中小スーパーには初期の「競争入札」で市場に出た値段の高い備蓄米(ブレンド米)や輸入米、そして高くて売れない「銘柄米」の在庫が山と積まれています。

 あなたはもう、あの「備蓄米」を手に入れましたか? それとも、いまだに「幻の米」として見たこともないでしょうか?

 JNNの世論調査によると「備蓄米を買いたい」と答えた人の割合は48%、そして実際に買った人は、わずか3%にとどまっているそうです。

 確かに、すべての人がこの備蓄米を買いたいわけではないし、量を減らしてでも「銘柄米」にこだわりたい人もいるでしょう。こんなに価格が高くなれば、お米の代わりにパンやパスタ、うどんなどの麺類に乗り換えた人も多いはずです。あなたはどんな防衛策を取ったでしょうか?

 中小スーパーは、安さも規模も大型店にはかないません。でも、「あなたの街に必要な店」として、毎日店を開け続けています。

 世の中の「備蓄米フィーバー」の陰で、歯を食いしばりながら日々営業を続ける中小スーパーの存在を、少しでも皆さんに知っていただけたら幸いです。

マスコミが伝えない「備蓄米フィーバー」陰の部分――スーパーの元店長が明かす本音 | スーパーマーケットファンマスコミが伝えない「備蓄米フィーバー」陰の部分――スーパーの元店長が明かす本音 | スーパーマーケットファン

編集者:いまトピ編集部