スーパーの店先、なぜか「焼き鳥屋」ばかり→「焼きそばやフライドポテトじゃダメ」な理由

「なぜスーパーの店先にある屋台は『焼き鳥屋』ばかりなのか?」
そんな疑問を抱いたことはありませんか?元スーパー社長の小林久氏に解説してもらいました。
実は、スーパーと「焼き鳥屋」の“切っても切れない”事情があったのです。
<スーパー側のメリット>
①店内での“買い上げ単価”が上げる
焼き鳥」の最大の強みは、なんといってもその“匂い”。焼き鳥の匂いには、人間の空腹感を強く刺激する力があります。特に夕方、空腹と疲れがピークに達する時間帯に漂う「炭火とタレの香ばしさ」は、強力に購買意欲をそそります。
たとえあなたが「焼き鳥」を買わなくても、スーパー店内での“買い上げ単価”を上げる効果が。
②賃料収入
スーパーの駐車場が満車になるのは、比較的都市部にある一部の店舗に限られ、ほとんどの店舗ではスペースに余裕があります。各種イベント(フリマなど)や不定期な催し物より、定期的な収入が見込める“常設”の催事業者は、厳しい経営の中にあって、ありがたい存在。
「店内の焼き鳥の売り上げに影響はないの?」という疑問を持つかもしれません。答えはもちろん「影響あり」です。
しかし対抗するように店内で煙や匂いを出すわけにもいきません。それなら多少、惣菜部の焼き鳥が売れなくなっても、100%純利益になる「賃料収入」を得るほうが店舗全体のメリットが大きいので、「良し」としているのが正解です。
<焼き鳥屋側のメリット>
①客数が多い好条件の場所
お祭りなどの“露店商”とは違って常設営業のため、保健所の営業許可や火気の使用申請、食品衛生責任者の設置などが必要。
客数が多い人気のスーパーで「焼き鳥屋」を営むことは、まさに“宝くじ”に当たったようなもの。そんな好条件の場所はまさに「利権」ともいえ、簡単に第三者には譲りません。
そんな焼き鳥屋で注目すべきは、なんといっても“高い利益率”。
値段も手軽に1本100〜200円ほどで買え、味付けも「タレと塩」の2種類、種類は「ねぎま・モモ・鶏皮・砂肝」など4〜5種類に抑えれば、シンプルで在庫管理も簡単。
1本の原価は30〜40円程度。コンロの炭やガス代、賃料を差し引いても、売り上げの「50%以上」の利益。
たとえば、1日30人のお客さんが焼き鳥を10本ずつ買えば、売り上げは3万円(1本100円換算)で月商90万円。最低でも粗利益ベースで1カ月約40~50万円を稼げるビジネスモデルです。
しかも少人数で切り盛りすれば人件費も抑えられ、夫婦や兄弟で営業するには十分な収入が得られます。
これが「焼き鳥」ではなく「焼きそば」や「フライドポテト」では“客単価”が低く、リピート客も少ないので、ビジネスが成り立ちません。
スーパー側も、焼きそばやフライドポテトでは匂いも弱く、お客さんを店内へ引き込む“相乗効果”が期待できません。
そういえば、最近食べていなかったなぁ……と思ったあなた。ひさしぶりにスーパーの店先で焼き鳥を買ってみませんか?
「おじさん、焼き鳥10本ちょうだい、塩とタレ5本ずつ!」
編集者:いまトピ編集部