日産、「さすがにマズイ」と他社がやめた〇〇をずっと続けていた…過去最大「30億どころじゃない騒ぎ」
日産自動車が下請法に違反しているとして、公正取引委員会は7日、再発防止を勧告した。
下請けの自動車部品メーカー36社への支払代金約30億2300万円を不当に減額していた。
日産は下請けメーカーに対し、契約書で定められた発注額から「割戻金」として一部を差し引いた代金を支払っていた。
報道番組『WBS(ワールドビジネスサテライト)』(テレビ東京)によれば、下請けに金額を決めないままに数量と納期だけを指定して製造させ、納品時に見積額から5割を減額させることもあったという。
今回、公取委が日産の社名を公表してまで「勧告」という処分に踏み切ったのは、「過去最大の減額事件」(公取委)としてその行為を重く受け止めているからだ。
1956年の下請法施行以来、公取委が認定するものとしては過去最高額だが、全国紙記者はいう。
「30億円という金額は、あくまで公取委が把握している金額のみ。発注書の書類上、明確に日産が下請けに対し値引きさせているというエビデンスが伴わないケースや、日産から取引を切られることを恐れて公取委に被害を報告していないメーカーも少なくない。実際の金額は何倍にも上るとみられている」
また、自動車業界を取材するジャーナリストの桜井遼氏はいう。
「どの自動車メーカーも定期的に部品メーカーとの間で原価低減を行っており、たとえば低減目標金額が100万円だったとして、仮に50万円しか下がらなかった場合は、その結果を前提に自動車メーカーと部品メーカーが25万円ずつ利益を折半するというかたちをとっている。だが日産は50万円しか下がらなかった場合でも『100万円低減できていれば得られたはずの50万円分の利益はきっちりもらいますよ』というロジックで、足りない分を割戻金というかたちで部品メーカーから吸い上げていた。かつてはどの自動車メーカーも同じようなことをやっていたが、『さすがにまずいよね』ということで是正した一方、日産はいまだに続けていた」
こうした日産の企業体質の背景には、同社の外部の取引先に対する厳しいコストカット意識がある。
「下請けへの値下げ行為が、日産の業績を良く見せるための都合良い、かつ重要なツールになっていた。」と話すのは自動車業界関係者だ。
「社内ではコスト削減が担当者への評価に反映されるため、決算前のシーズンに駆け込みで下請けに値下げを要求するということまで行われていた。それが『WBS』内で部品メーカーが証言している『合理化要請』と呼ばれるもの。日産は個別の発注書でその値下げ分を値引きして支払うかたちにして、事実上の上納金を納めさせていた。日産は『あくまで下請けとの合意の上』と主張しているが、『強制的に受け入れさせた合意』という意味ではそのとおりだろう」
別の自動車業界関係者はいう。
「程度に差こそあれ、似たようなことや、仮発注のようなかたちで金額を決めないままモノをつくらせるといったことは、過去には自動車業界全体で広くみられた。ただ、他社はコンプラ的にさすがにまずいということで是正したが、日産は続けていたということ」
今回の勧告を受け、現状記者会見を開かない日産。
「事案の重大さからいえば会見を開くべきだが、日産としては実態をありのまま話せば企業としての信用問題につながりかねないため『開きたくない』というのが本音だろう。『検査不正などと違って一般消費者に迷惑をかけているわけではない』というロジックかもしれないが、これがトヨタやホンダであれば、しっかり会見を開いて経営陣が謝罪し、禊を済ませるところだろう。こうしたところに日産のカラーが出ている」(全国紙記者)
自動車業界関係者によると、下請けと元請けの関係も変わりつつあるという。
「技術力のある企業は自力で海外企業からの受注を増やしている。これまで下請けを囲い込んで安値で受注させていた大手が、これからは逆に下請けから『切られる』『選別される』という動きも出てくるだろう。」
最近では、これまでトヨタのほぼ言い値で鋼材を納めていた日本製鉄がトヨタに大幅な値上げを要求するという“事件”も起きているが、完成車メーカーだけが儲ける自動車業界も健全な状況に向かっていくかもしれない」
以上、Business Journalからお届けしました。
編集者:いまトピ編集部