電気自動車「ゴミになる」

米国政府は3月、普通乗用車の新車販売のうち電気自動車(EV)の占める比率を2032年までに67%にするとしていた目標を、35%に引き下げた。
米国の“改心”が世界のEV普及一辺倒の流れにブレーキをかけ、エンジン車回帰が進むとの見方も出始めている。
エンジン車とハイブリッド車を合計した「エンジン搭載車」の比率は23年時点で82.4%となっており、脱エンジン車を掲げる欧州ですら、いまだ新車販売の8割がエンジン車となっているという(日経新聞記事より)。
自動車メーカー関係者はいう。
「EVが好調なのは、政府が国策としてEVを推進する中国くらいで、米国と欧州は失速状態といっていい。充電ステーションが普及していない点や高額な価格、航続距離の短さといった制約により、EVの購入層は一部のエリア、人に限られるのが実情で、『行き渡るべき人には、ひとまず行き渡った』ため現在の諸条件下では需要が頭打ちになった、というのが今の状況。」
「EVはエンジン車とは構造が大きく異なり、また絶対数として流通台数が少ないため、自動車整備工場にノウハウや部品がなくて修理できなかったり、修理費用が高額になる可能性がある。また、損保会社の任意保険の保険料がガソリン車よりも高い傾向があるというのもネックだ」
そしてEVの普及には根本的な問題が「大きくは3つある」と自動車業界関係者はいう。
「酸化炭素(CO2)排出量の削減など環境負荷低減だが、原材料の採掘から製造、廃棄までの全工程ベースではEVのほうがエンジン車よりもCO2排出量が多く、環境負荷が重い」
「原材料となるレアアースの調達が、量が少ない上に埋蔵地は一部の国に偏在しており、大手の自動車メーカーでも調達が難しい」
「世界のEV市場では中国系メーカー勢が4割以上を占めており、欧米メーカーが中国メーカーに対して優位性のあるエンジン車に回帰していくことも十分に考えられる」
なんでもアメリカでは、「リセールバリューの低さや充電ステーションの少なさから、“大量のEVがゴミになる”というジョークまで聞かれる」ほどのようだ。
トヨタ自動車の豊田章男会長は『BEV(バッテリー式電気自動車)が進んだとしても市場シェアの3割だと思う』と言っているが、世界全体でみれば、それくらいが上限となってくるというのが業界的な肌感覚と言えるようだ。
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編集者:いまトピ編集部