2024/7/31 16:04

『郵便』存続の危機、ビジネスとして限界

郵便

日本郵便の郵便事業が存続の危機にさらされている。同社は2023年度の郵便事業収支の営業損益が896億円の赤字となったと発表。赤字は2期連続。26年以降も赤字が続く見通しとなっており、民間企業ゆえに事業の継続は難しくなってくる。07年の民営化から17年が経過し、日本郵便の経営は岐路に立たされている。
日本郵便は25日、「郵便事業の収支の状況(2023年度)」を発表。国内郵便はデジタル化の進展に伴う郵便物の減少などにより前年比701億円(5.9%)の減収となり、918億円の赤字、国際郵便は米国・英国あて通常郵便物の一部引受再開の影響などにより前年比41億円(5.8%)の増収となり、22億円の黒字となった。売上が落ちる一方、集配運送委託費の増加などにより営業費用は25億円(0.2%)増加し、営業損益は前年比685億円の減益。22年度の211億円の赤字から赤字幅は大きく広がった。
足を引っ張るのが国内郵便事業だ。国内普通郵便の営業収益(売上高に相当)は21年度からの2年間で859億円減少しており、減少は続くとみられる。

一方、日本郵便の業務区分別の収支をみてみると、第1号(郵便物、印紙など)と第2号(通常・定額・定期貯金、為替・振替など)は赤字だが、第3号(養老・終身保険)は営業損益ベースで78億円の黒字、第4号(荷物、不動産、物販、投資信託、がん保険など)は1106億円の黒字を確保。全事業では37億円の赤字となっている。

郵便事業が赤字になっている原因について、小泉純一郎政権下で郵政民営化の基本方針を検討した郵政懇談会で委員を務めた経験を持つ、元郵便事業株式会社取締役で東洋大学教授の松原聡氏はいう。
「大きな要因は年賀状の減少です。郵便事業は一通あたり数十円で1軒1軒配達しなければならず、私が郵便事業株式会社の取締役を務めていた15年ほど前の当時でも、年賀状以外は赤字で、年賀状によって全体でなんとか黒字を維持するという状況でした。その年賀状が近年、大きく減少してきたことで赤字に陥ったのは当然です。以前は郵便局員に年賀状の高い販売ノルマを課し、売れ残ると局員が自腹で購入するという行為が横行していましたが、定年退職を迎える人が増えて一人あたりの年賀状を送る数が減り、さらに人口減少に加えて若い人には年賀状を送るという習慣がないため、どのような手を打っても年賀状の減少を食い止めることは無理です。
また、SNSの普及などにより手紙の利用機会が減り、コミュニケーションツールの主要マーケットがデジタルに移行している点も赤字の要因です」

郵便事業の黒字化は可能なのか。
「郵便事業は人件費率が高いため合理化・効率化が難しく、黒字化は相当難しいと考えられます。郵便事業は公企業でも株式会社なので赤字が続けば破綻せざるを得ず、かといって税金で補てんすることも難しいです。黒字化のためには大幅に人件費を削減する必要がありますが、たとえば配達の頻度を週2回くらいにしてポストの数も減らすことで、人件費を削減することは可能です。サービスは低下することになりますが、郵便事業を完全になくすことができないのだとすれば、やむを得ないという判断もあるでしょう。これらの取り組みは郵便法を改正すれば可能ですし、郵便法上のユニバーサルサービスの定めを残しながら、なんとか郵便事業を維持するための抜本的な改革を検討すべき時期にきています。

ただ、こうした法律の改正では行政により抵抗も予想されます。かつて信書の送達事業について民間事業者の参入を可能するために信書便法が制定される際、私がヤマト運輸の経営者に直接話を聞いたところ、約1000通を一つの定型パックに同封することで東京から札幌の配達拠点まで1通あたり1円のコストで送れるということで、参入に前向きな姿勢を示していました。ですが総務省は日本郵便の既得権益を守るために、事業を手掛ける民間事業者に対して郵便ポストと同数レベルのポストを設置して、かつ毎日回収することを義務付け、新規参入が事実上できないようにしました。結果的にヤマトは参入を断念し、現在でも信書便事業を行う事業者は事実上、日本郵便以外ありません。
こうした法律を改正して民間事業者の参入が増えれば、新たなマーケットやサービスが生まれ、結果的に日本郵便の事業拡大にもつながる可能性もあるのではないでしょうか」(松原氏)

とBusiness Journal は報じている。

郵便、存続の危機、ビジネスとして限界…配達は週2日・郵便ポスト削減も現実味 | ビジネスジャーナル郵便、存続の危機、ビジネスとして限界…配達は週2日・郵便ポスト削減も現実味 | ビジネスジャーナル

編集者:いまトピ編集部