2024/8/15 10:35

『ドラマ』第7話「もう嫌になっちゃいました」解像度の高さに「共感した」

テレビ

さて、私個人としては結婚もしてないし子どももいないし、女の人を妊娠させたこともないし、させる予定もないし、親とも疎遠だし、おかげでこの地獄絵図を気楽な場所から楽しめているドラマ『海のはじまり』(フジテレビ系)も第7話。煮詰まってきましたねえ。

 登場人物の中で、唯一共感できそうな立場なのが、津野くん(池松壮亮)なんですね。職場にやってきたかわいいシンママにちょっと気をひかれてお節介しちゃう感じ。これは、わからんでもない。

前回、夏くん(目黒蓮)に対して「僕のほうが悲しい自信があります」とマウントを取ってきた津野くん。なんにも知らないくせに水季(古川琴音)が死んだら急に現れて、あんなに仲が良かった海ちゃん(泉谷星奈)もすぐ懐いちゃって、とにかくいろいろ気に食わない様子です。

水季は津野くんの「気持ちを利用してる」ことも自覚しながら、ずっと一線を引き続けています。絶対に敬語を崩さないし、色目を使うようなこともない。津野くんにすがりつきながら、津野くんの気持ちを蔑ろにし続けている。

 おばあちゃんからの電話が鳴って、津野くんが水季の死を察してしまうシーンは圧巻でした。おばあちゃんからの電話なんて、水季が死んだことを告げる以外ありえないことがわかっている。おばあちゃんも、水季と津野くんの曖昧な関係を利用していたということです。家族ぐるみで、その関係は曖昧なまま成熟していたのです。

津野くんは津野くんで、海ちゃんはかわいいし、水季の力になりたいと思っていた。

「僕のほうが悲しい自信があります」と言った津野くんの気持ちは痛いほどわかるし、今回、弥生ちゃん(有村架純)に「あの人(夏くんのこと)、水季水季うるさいんですよね」と言った気持ちもわかる。自分はずっと「南雲さん」って呼んでたし。

 だけど踏み込まなかったのは津野くん、あなたなのよね。

 シングルマザーにはお金と時間がない。このドラマで何度も語られてきたことです。

 津野くんは海ちゃんのお迎えに行ったりお世話をしたりすることで、水季の時間の負担を軽減していました。

 でも、金をくれてやったわけじゃない。金をくれてやるって言い方は直接的すぎてアレだけど、ちゃんと水季と海ちゃんの将来のことを考えて、シリアスなアクションを起こしていたわけじゃない。津野くんは、一度も水季にフラれていない。

 曖昧にしていたのは、津野くんだって一緒なんです。職場のかわいいシンママの役に立ってる自分に酔っていたことは間違いないし、責任を取らないまま、女の人の弱みにつけ込んで、困窮を利用して「家族ごっこ」を楽しんでいたのは津野くんのほうなんです。まるで覚悟がないんです。

「僕のほうが悲しい自信があります」じゃないんだよ。それだって「大切な人を失った」という「ごっこ」でしかないんだよ。ホントに大切なら背負えよ。丸ごと背負うんだよ。

 このドラマの、そういう曖昧で「優しい」を自負する男への解像度の高さに、もう嫌になっちゃいました。おばあちゃんはその津野くんの曖昧さを理解してるから、水季の部屋の整理をさせなかったんだもんね。「家族でやりますから」って言い放ったんだもんね。

 このドラマで唯一、私が個人的に共感できる立場なのが津野くんでした。共感しちゃったなぁ。いやー共感した。嫌だよねえ、シンママの生活を丸ごと背負うなんて。怖いよねえ、リアルな家族なんて。ああ、ああ。と日刊サイゾーは報じた。

『海のはじまり』第7話 蔑ろにされた「津野くん」の優しさと、見透かされた覚悟のなさ|日刊サイゾー 『海のはじまり』第7話 蔑ろにされた「津野くん」の優しさと、見透かされた覚悟のなさ|日刊サイゾー

編集者:いまトピ編集部