『世界的建築家』設計の駅が9年でカビだらけ…改修に3億円の建築物も
Amazon世界的建築家・隈研吾氏が設計した栃木県那須郡にある「那珂川町馬頭広重美術館」が開館から24年を迎え、老朽が激しく大規模改修を行うため3億円の費用がかかることになった問題。同美術館における木材の使い方に疑問の声が上がるなか、隈氏が設計した完成から9年が経過した京王線高尾山口駅(東京都八王子市)の駅舎もカビが目立つようになっているとして注目されている。
隈氏の設計した建築物の老朽化問題が顕在化し始めたのは、先月のことだった。那珂川町馬頭広重美術館が開館から24年を迎え、老朽化のため大規模改修を行うことになったのだが、その改修費用が約3億円かかることが判明し、規模が大きくはない那珂川町にとっては大きな負担となっている。
この美術館は、馬頭広重の肉筆画や版画をはじめとする美術品を中心に展示し、町の中核的文化施設とすることなどを目的として2000年に開館。木材を多く使用し、周囲の自然に溶け込むデザインが好評を博し、県外からも多くの観光客が来訪するが、竣工から数年後の時点で木は黒ずみ、劣化が目立つようになり、現在では木材は痩せて隙間が広がり、ところどころで折れたり崩れ落ちたりしている。まるで防腐処理やニス塗装なども行っていない木材を雨ざらしにしたような傷み方だ。
専門家からは材木の使い方に疑問が相次ぎ、隈氏は全国で多くの公共建築をデザインしていることから、ほかの建築物でも同様の事態が生じるのではないかとの懸念が広がるなか、前述のとおり高尾山口駅でも外壁のいたるところにカビが目立ちカビだらけ状態になっていることが指摘され、さまざまな声があがっている。
建設会社社員はいう。
「一般的に今の建築物は住宅にせよ大規模な施設にせよ、10年程度で外壁に目立ったサビや朽ちる部分が生じるということはありません。高尾山口駅は数年前に大雨で浸水したことがあるとのことですが、その程度ではサビなどは出ないように建材の選定や加工がなされています。同駅の写真をみると景観を重視して非常にデザインに凝っているようなので、耐久性よりもデザイン性が重視されたのかもしれませんが、おそらく発注者側は10年程度で大きく老朽化するという事態は想定していなかったのではないでしょうか」
別の建設会社社員はいう。
「よく『●●は、あの隈研吾が設計した建物』といういわれ方をしますが、実際には大所帯である隈氏の事務所(隈研吾建築都市設計事務所)のスタッフが設計したもので、隈氏は適時チェックはしているでしょうが、事務所全体では常に多くの案件を抱えていると聞きますので、最終責任者である隈氏がどこまで細かい部分までチェックしているのか、という問題はあるかもしれません。隈氏は大御所の建築家でいらっしゃるにもかかわらず、商業施設に加えて学校や小規模な公共施設など、安い予算の案件も意欲的に引き受けるポリシーを持っておられ、それはとても尊敬すべき姿勢だとは思いますが、全国で例の美術館や高尾山口駅のような問題が続出する懸念もあります」
当サイトは2024年10月1日付記事『隈研吾・建築物「劣化」問題、他の建物も大改修が必要か…木の使い方に疑問も』で一連の問題に関する専門家の見解を伝えていたが、以下に再掲載する。
――以下、再掲載――
日本を代表する世界的建築家・隈研吾氏の建築物に対し、疑念の声が噴出し始めている。きっかけは、同氏がデザインした「那珂川町馬頭広重美術館」のトラブルだ。通常ではありえないほどの早さで劣化が進み、開館から25年を迎える来年に向けて大規模改修を行うことになったが、その費用が3億円ほどかかるという。小さな地方都市には大きな負担だ。隈氏は、全国で多くの公共建築をデザインしていることから、ほかの建築物でも多大な修繕費用が必要になるのではないか、との懸念が湧き上がっているのだ。専門家に、隈氏の建築物について見解を聞いた。
隈研吾氏は、東京大学工学部建築学科を卒業後、東京大学大学院工学修士、慶応義塾大学大学院理工学博士。米コロンビア大学建築・都市計画学科客員研究員を経て、隈研吾建築都市設計事務所を設立。法政大学工学部建設工学科非常勤講師、慶應義塾大学環境情報学部特別招聘教授、早稲田バウハウス・スクール講師、慶應義塾大学理工学部客員教授、慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科教授、米イリノイ大学建築学科客員教授などを歴任。
現在は、東京大学特別教授・名誉教授、早稲田大学特命教授、東京藝術大学客員教授、岡山大学特別教授など、名だたる大学や地方自治体のアドバイザーや顧問職を務めている。さらに、隈氏は木材を使用したデザインが特徴的で、「和(日本)」をイメージした建築が多いことから「和の大家」と称され、高知県立林業大学校校長や、岐阜県立森林文化アカデミー特別招聘教授、一般社団法人日本ウッドデザイン協会会長など、「木」に関する団体でも多く名誉職を得ている。
そんな隈氏がデザインした栃木県那須郡にある「那珂川町馬頭広重美術館」が開館から24年を迎え、老朽化のため大規模改修を行うことになったが、同美術館における木材の使い方に疑問の声が上がり、大きな話題になった。地元の人たちによると、開館から5年ほど経過した頃には、すでに屋根や外壁に使われている木材がひび割れたり、朽ちたりしていたという。今回、大規模改修をするにあたり約3億円の費用を見込んでおり、町は改修費用の一部をクラウドファンディングでまかなうという。
那珂川町馬頭広重美術館は、主に江戸時代の浮世絵師・歌川広重の作品などを展示した美術館。地元産の八溝杉(やみぞすぎ)を細く加工して屋根や壁に格子状に並べ、斬新なデザインで当初は好評を博し、村野藤吾賞や公共建築賞特別賞、日本建築学会作品選奨などを受賞している。
だが、建築の専門家は、そもそもデザインの段階から問題があると指摘する。
「那珂川町馬頭広重美術館では、スギの木を屋根や壁に使用していますが、普通ではありえないデザインです。ヒノキなどの油分を多く含む材質であれば水に強いのですが、スギは室内や屋根の下など直接風雨にさらされない場所で使う材木です」(一級建築士で建築エコノミスト・森山高至氏)
隈氏は、ほかにも国立競技場など公共建築物を設計されているが、それらも同様に、比較的短期での大規模改修が必要になる可能性はあるのだろうか。
「隈氏に限らず、ほかの建築家でもあることなのですが、無名な頃には予算の少ない依頼を引き受け、そのなかで自分の名前を広められそうな目立つデザインをしたりします。那珂川町馬頭広重美術館も、そのひとつといえます。使っている材料にもよりますが、大規模改修が必要になるものも一部あると思います。一方、最近の作品では、そのような心配はないと思います。国立競技場や高輪ゲートウェイ駅、高尾山口駅などは問題ないでしょう」(同)
隈氏のデザインとしては、東京・世田谷の「M2ビル」、高知の「雲の上のホテル」など民間の建築物のほか、宮城・石巻の博物館「北上川・運河交流館 水の洞窟」、宮城県登米町の「伝統芸能伝承館森舞台」、栃木・那須「石の美術館」、作新学院大学の校舎群といった公共性の高い建物も多い。さらに、兵庫・伊丹市役所庁舎、千葉市役所庁舎、滋賀・守山市役所庁舎、兵庫県庁舎など、自治体庁舎も多く手掛けている。
伝統芸能伝承館森舞台で日本建築学会賞を受賞したほか、作新学院大学校舎群では栃木県マロニエ建築賞(街並み景観部門)、としまエコミューゼタウンビルでグッドデザイン賞とBCS賞、京王電鉄高尾山口駅駅舎でグッドデザイン賞、JR高輪ゲートウェイ駅でグッドデザイン賞など、数多くの受賞歴がある。
2019年には紫綬褒章も受賞し、今や建築界においては右に出る者はいないほどの大物と目されているが、「M2ビル」は業界誌で「世界の10の醜悪なビルの一つ」と酷評されるなど、若き頃には本人ですら振り返りたくないようなデザインもある。それらが、今、ネットやメディアでクローズアップされているのだ。
以上、ビジネスジャーナルが報じた。
編集者:いまトピ編集部