『JR』原因不明の...多発【異常】
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JR東日本の中央・総武線の各駅停車で3~4年ほど前から、運転手の体調不良によるオーバーランや、停止位置より大幅に手前での停車、居眠り運転、急な運転手交代に伴う運転の一時停止などが相次いでいる。JR東日本は鉄道ジャーナリスト・梅原淳氏の取材に対して、原因は特定できないとの回答を寄せたが、何か想定される原因というのはあるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
2024年7月18日付「東京新聞」記事『電車のオーバーランがなぜか多発 中央・総武線の中野電車区(筆者注、2024年10月1日に中野統括センターに統合)、3年で40件 運転士の間では「中電病」とも』によれば、同路線の各駅停車(三鷹-千葉間)の運行を担当する中野電車区では、こうした事態が過去3年間に約40件発生しており、「中電病(なかでんびょう)」と呼ばれているという。電車の運行中に運転士が体調不良や突発的な疾病を起こし、運転が止まるという事態は稀に起こるが、一つの路線で平均して1カ月あたり1件以上起こるというのは異常といえる。
特定の鉄道会社や路線・区間で運転手の体調不良が著しく多くなったり、オーバーランなどのアクシデントが著しく多くなるケースというのは、あるものなのか。鉄道ジャーナリストの梅原淳氏はいう。
「元来、運転士をはじめとする乗務員は早朝や深夜の勤務があり、休日も交代で休みを取るという具合に生活リズムが不規則で体調不良になりやすい職業です。そのうえで、特定の鉄道会社や路線の置かれた労働環境、たとえば衛生状況が劣悪といったケースがあれば運転士の体調不良が著しく多くなることはあります。しかし、高度経済成長期以降に実施された労働環境の改善、保安装置の充実といった施策が功を奏し、勤務中の事故、疾病は減ってきました。
オーバーランが多くなるケースとして、ホームドアを導入して停止位置がシビアになったことが考えられます。中央・総武線各駅停車ではホームドアが設置された駅に停車する際には電車が自動的に所定の位置に停止するTASC(定位置停止装置)が導入されているので、オーバーランが増える要素は少ないでしょう。ただし、ホームドアが導入された駅とそうでない駅とが混在している現在の過渡期の状況では、TASCがあったりなかったりという状況となるので勘違いからオーバーランするという可能性は考えられます」
では、中央線の各駅停車でこのような事象が起きている原因としては、何が考えられるか。
「24年7月18日付『東京新聞』記事では、見出しにあるように確かに21年6月以降の3年あまりで他の路線と比べて多くのオーバーランが発生し、その原因も運転士の体調不良に起因するものが多くなっているとのことです。筆者(梅原淳)がJR東日本に問い合わせたところ、そうした状況は把握しているものの、原因はわからないとの回答が得られました。トラブルが多くなってからも人事異動は実施され、運転士が他の路線に転出したりあるいは他の路線から転入してくることもあり、特定の運転士だからトラブルが発生しているという状況でもないようです。
それからもう一つ、中央線・総武線各駅停車の電車の運転は中野電車区のほかに習志野運輸区(筆者注、2024年4月1日に津田沼統括センターに統合)の運転士も担当しておりますが、同社によると習志野運輸区の運転士によるオーバーランが頻発しているとか、体調不良が目立つということはないといいます。さらにいいますと、2024年11月を最後に中野統括センター所属の運転士によるオーバーランは発生していないそうです。JR東日本から得られた以上の情報を前提に言うならば、中央・総武線各駅停車でトラブルが多かったのは今のところは偶然に近いものと筆者は考えます」
と、ビジネスジャーナルが報じた。
編集者:いまトピ編集部