『札幌ドーム』6億5100万円赤字もV字回復、なぜ
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北海道札幌市の大和ハウスプレミストドームを管理運営する札幌ドームについて、2025年3月期決算の純損益が2400万円の黒字となる見通しであることが23日、札幌市議会で報告された。プロ野球球団・北海道日本ハムファイターズの本拠地ではなくなり初の通年決算となった24年3月期は6億5100万円の赤字であったことから、劇的に収益が改善されたことが話題を呼んでいる。一方で、これまでも札幌ドームには札幌市から多額の助成金などが投入されており、こうした市による支援という要素を除いても黒字となっているのかもポイントとなってくる。なぜ急激なV字回復を遂げることができたのか。札幌ドームへの取材を交えて追ってみたい。
01年に開業した札幌ドームは、経営安定化のためにプロ野球球団の日ハムを誘致し、04年から日ハムの本拠地となっていた。だが、札幌ドームは16年に日ハムから徴収する一試合当たりの使用料を値上げ。日ハムが札幌ドームに支払っていた使用料は1日あたり約800万円前後とみられ、球場内の広告料や売店など付帯施設からの収入もほとんどが札幌ドームの取り分となっていた。日ハムは札幌ドームに対し、使用料の減額や指定管理者制度(公共施設の運営を民間企業等に委託する制度)の導入などを提案してきたが、受け入れられず、16年頃から本拠地移転の検討を本格化。新球場の建設候補地として札幌市は旧道立産業共進会場(現ブランチ札幌月寒)、北海道大学構内、真駒内公園などを提案したが、日ハムは北広島市が提案する「きたひろしま総合運動公園」予定地の活用案を採用。日ハムは新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO(北海道)」(運営会社:ファイターズスポーツ&エンターテイメント)を北広島市に開業させ、23年シーズンから本拠地を移した。
エスコンフィールドは2023年に球場としての売上が251億円と、札幌ドームを本拠地としていた19年と比べ93億円もの増収となるなど、開業1年目から大きな成功を収めた。その一方、日ハムを失った札幌ドームの苦境ぶりは鮮明となった。年間20億円以上とみられる売上を失い、イベント数の増加を狙い総額10億円をかけて「新モード」を設置したが、当初は利用数は低迷。また、命名権の公募を実施し、1年で2億5000万円以上、希望期間2~4年を条件として提示していたが、応募締め切り日までに応募はなく、募集は無期限に延長された(24年7月に大和ハウス工業とのネーミングライツ契約を締結)。
そんな札幌ドームだが、わずか1年で黒字転換できた理由はなんなのか。Business Journalの取材に対し札幌ドームは次のように説明する。
「黒字化に向けて尽力しておりますが、期中の見込み額含め収支についての公表は例年通り行っておりませんので、決算発表までお答えできかねます。黒字化実現のために『イベント日数の増加』『ネーミングライツ等の広告収入の増加』『サービス水準を維持した状態でのコスト削減継続に伴う経費の削減』を遂行しております」
大和ハウス工業とのネーミングライツ契約による広告収入は年間2億5000万円。また、北海道新聞の報道によれば、音楽ライブやスポーツなどのイベント開催日数は前期比31日増の129日となっているという。
もっとも、これまでも札幌ドームには札幌市から助成金などのかたちで税金が投入されており、そうした資金なしでも黒字経営となっているのかがポイントとなってくる。たとえば札幌市は23年度予算で札幌ドームへの助成金として1億4000万円を計上していた。また、前述の「新モード」の設置費用10億円も札幌市が拠出した。
24年度に札幌市から助成金などの財政援助を受けているのか。札幌ドームはいう。
「毎年、アマチュアスポーツ大会の利用料金減免補填補助金を受けております。収支についての見込みおよび詳細は先述の通り決算発表までお答えできかねます」
と、ビジネスジャーナルが報じた。
編集者:いまトピ編集部