2025/3/20 15:46

『スシロー』通常は休業だが「営業」非常に難しい判断

スシロー

大手回転寿司チェーン「スシロー」の宮崎恒久店の一部アルバイト・パート従業員が、会社側が賃上げ要求に応じないことからストライキを実施。だが会社側が県内外の店舗から社員を派遣し、ストに参加しない従業員とともに店舗を休業せずに営業にこぎつけ、組合側は「スト破り」だと主張している。スシローの運営会社FOOD & LIFE COMPANIES(F&LC)はBusiness Journalの取材に対し、「現在団体交渉中であり、誠心誠意対応しております。従い、現時点でお話しできる内容はございませんので、ご理解の程お願いいたします」と説明する。
外食チェーン関係者は「運営会社側としては、店舗が休業となれば顧客に迷惑がかかりますし、寿司店という特性上、鮮度が命の生の食材も多く扱うことから廃棄ロスが生じる可能性もあり、『スト破り』との批判が寄せられることも承知の上で、顧客へのサービス継続の重要性や業績的な損失などを総合的に勘案して難しい判断だったといえます」という。

全国に646店舗(2024年9月末現在)を展開し、店舗数ベースでは国内回転寿司チェーン業界1位のスシロー。一皿120円(税込)からという低価格でおいしい寿司が食べられる点が特徴だ。レギュラーメニューとしては「サーモン」「しめさば」「生えび」「煮あなご」といった定番ネタを120円(店舗によって異なる/以下同)で提供し、現在は期間限定で「大切り厳選まぐろ赤身」(110円)、「和牛さしとろ ウニいくらのせ包み」(360円)、「本鮪中落ちにぎり」(260円)などを提供。このほか、「濃厚えび味噌ワンタンメン」(390円)、「モッツァレラチーズ天ぷら」(280円)などサイドメニュー、「わらび餅と大学芋のどっちも盛り」(230円)、「カタラーナアイスブリュレ」(230円)といったスイーツも充実している。

業績は好調だ。F&LCの24年10~12月期決算の連結純利益は前年同期比88%増の61億円。売上高の約4分の1は海外スシロー事業となっており、現在182店(24年9月期)ある海外店舗数を26年9月期までに310~320店まで増やす計画を示すなど、海外市場進出に力を入れている。

そんなスシローでは3月に入り、複数の店舗で非正規従業員によるストライキが行われている。スシローなど回転寿司チェーンで働くアルバイト・パート従業員が加入する労働組合「回転寿司ユニオン」は、16日に宮崎恒久店(宮崎県宮崎市)で行われたストライキについて、現行の基本時給1000円を1200円以上に引き上げることを会社側に要求しているが、ゼロ回答が続いているためストに踏み切ったと主張。会社側が他の店舗から社員を派遣して営業を行ったことについて、公式Xアカウント上で次のように批判している。

「スシロー会社の今回のスト破りは、私たちスシローではたらくパート・アルバイトだけでなく、いつもご利用いただいているお客さまをも失望させてしまいかねない行為だということを、会社にはよく理解してもらいたいです」 

外食チェーン関係者はいう。

「まず、賃上げ交渉については、労働組合と会社の双方に主張があると思われるので、その協議次第ということになるでしょう。次に、ストについては従業員に認められた権利なので、それを行使することは認められてしかるべきです。そして今回のスシロー側の『ストが行われても店を営業する』というのは、非常に難しい判断だったと考えられます。通常はストが行われれば休業するというかたちになりますが、休業は基本的には店舗を利用したい顧客の利用機会を奪い迷惑をかけることになりますし、原材料が使えないことによる廃棄ロスも起こり、一日休業することによる営業的な損失は小さくありません。
また、この店舗のすべてのパート・アルバイト従業員がストに参加していたわけではないようなので、その従業員たちの労働機会が奪われてしまうことにもなるので、他店舗から社員を派遣してでも営業するというのは経営判断の一つということになります」

「実は、ストライキは『従業員が団体行動をする権利はこれを保障する』と規定する憲法によって認められているのです(28条)。しかし、いきなりストライキができるわけではなく、会社側と協議を尽くした上で、労働組合内で多数決で決めた内容でその労働組合の目的に沿って手段・態様を正当に行わなければなりません。要するに、話し合いを続けたけど従業員側の要求が通らなかった後に労働組合が主体となって穏便に行う必要があるわけです。

今回、従業員のストライキに対し、会社側は別のスタッフで店舗を運営しているようですが、至極、当たり前の行動です。従業員が憲法に基づいたストライキという行動をしている一方で、会社も憲法によって保障された営業の自由があるので、働かない従業員のかわりに店舗を営業することは、何の問題もありません。ロックアウトと言って、その店舗を閉鎖してしまうといったドラスティックな手法をとるより、よっぽど“優しい”対応です」

とBusiness Journalは報じている。

スシローの行動は至極、当たり前、顧客満足優先か…ストの店舗に社員派遣し営業 | ビジネスジャーナルスシローの行動は至極、当たり前、顧客満足優先か…ストの店舗に社員派遣し営業 | ビジネスジャーナル

編集者:いまトピ編集部