2025/5/17 15:30

『ファミレス大手チェーン』続々と経営破綻

ファミリーレストランAmazon

米国で外食産業が苦境にあえいでいる。日本で言う「ファミリーレストラン(ファミレス)」は特に深刻で、大手チェーンが続々と経営破綻している。インフレでメニュー価格を値上げしたことで客足が遠のいたことが最大の要因だが、社会の変化に対応できていない戦略の失敗も背景にある。「トランプ関税」は消費マインドを一段と冷やし、客足はさらに遠のくとみられ、第2次世界大戦以降、拡大し続けてきた外食産業は大きな岐路に立たされている。

「知人や家族で外食する機会がめっきり減った」―。一部の富裕層は別として、大方の米国人が感じていることである。どこかで友人と会うにしても、レストランではなく喫茶店で終わってしまう。食事は自宅で済ます。外食は気軽にできるものではなくなった。

 こうした消費者感情の悪化をもろに受けているのが、日本の「ファミレス」に相当する「カジュアルダイニング」というレストランだ。座って食事をしたい低、中所得者層が主要顧客で、可処分所得の減少に伴い、客足が大きく遠のいた。

 オレンジ色の制服で知られる「フーターズ」を運営するフーターズ・オブ・アメリカは2025年3月31日、テキサス州の裁判所に、日本の民事再生法にあたる米連邦破産法第11条(チャプター11)の適用を申請し、経営破綻した。

 1983年にフロリダ州で誕生した「フーターズ」は、女性店員の露出度が高い制服が話題となり人気を博した。米国内に直営、フランチャイズ合わせて約300店を運営していた。

 2024年5月にシーフードレストランチェーン最大手の「レッドロブスター」が、8月にはイタリア料理チェーンの「ブカ・ディ・ベッポ」が、11月には幅広いメニューで「典型的なファミレス」と呼ばれた「TGIフライデーズ」が、同法の適用を申請しており、「カジュアルダイニング」が雪崩を打つように経営破綻している。
経営破綻は免れていても、「デニーズ」や「アップルビーズ」、「アウトバック・ステーキハウス」「レッドロビン」など米国を代表する「ファミレス」は大幅な店舗削減に踏み切った。

 レストラン業界は新型コロナウイルスの感染拡大以降、根底を揺るがす問題に直面してきた。感染拡大で人々が外出を控えた2020年には、デリバリーやテイクアウトに適さないメニューは販売できなくなり、売上高を大きく減らした。

 人々の動きが戻ったところで直面したのはサプライチェーン(供給網)の混乱だった。これまで問題なく買い付けることができた食材などが、手に入りにくくなった。そのため、レストラン側が望まない形でのメニューの変更を余儀なくされた。
これまでに経験をしたことがない激震が続いた後に来たのがインフレである。材料費の高騰が利益を圧迫した。利益を確保するための値上げが、一段の客離れを招くという最悪の循環に陥ってしまった。

レストラン価格はコロナ前より34%も上昇

 米労働統計局によると、2019年以降、米国のレストランの価格は34%上昇した。この期間のインフレ率の伸びや、一般家庭の給与の上昇率を上回る数字となった。

 米国の外食チェーンは、着席してゆっくりと食事をする「カジュアルダイニング」のほかに、ハンバーガーチェーンのマクドナルドのような「ファストフード」、「カジュアルダイニング」と「ファストフード」の中間に位置する「ファストカジュアル」という3種類に分類される。

 価格の順番で並び変えれば、高い方から「カジュアルダイニング」「ファストカジュアル」「ファストフード」となる。

 調査会社Circanaのまとめでは、米国人が「ファストフード」で支払う額は7.92ドルだが、「カジュアルダイニング」は倍にのぼっている。


 2024年の「カジュアルダイニング」の売上高は0.9%減少したのに対し、「ファストカジュアル」は0.6%、「ファストフード」は1%増加した。外食チェーンの中でも「カジュアルダイニング」は「カネがかかるレストラン」として市民に敬遠された。消費者がより安い外食を求めているということが鮮明になっている。

 ニューヨークでは貧しい地域に行くと、着席するフルサービスのレストランが目立って少なくなる。持ち帰りで購入した食事をイートインのような形で食べるレストランが多い。着席のレストランではチップを払わなければならず、顧客の負担が大きくなる。貧しい地域では以前から、外食産業はチップを強制しない形式でサービスをしていた。

 「カジュアルダイニング」離れは、米国社会が、貧しい地域の外食形態に変化しているかのようにも見える。

戦略ミスも低迷の要因 「ファストフード」にも迫る危機

 価格だけでなく戦略ミスも低迷の要因のようだ。

 「フーターズ」の女性店員の制服は、現代の消費者の感覚にマッチしたものではなくなっていた。「レッドロブスター」は20ドルでエビ食べ放題を定番のメニューにしたが、店舗のブランド価値を損ねる結果となった。

 一方で「ファストフード」も、かなり深刻な状況にある。マクドナルドが5月1日に発表した2025年第1四半期(1~3月)の米国内の既存店売上高は3.6%減少した。2四半期連続でのダウンで、減少幅は新型コロナで各州がロックダウンを実施した2020年第2四半期に記録した8.7%以降で最悪となった。危機は「ファストフード」にも迫っているとサイゾーオンラインが報じた。

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編集者:いまトピ編集部