予想外の高い支持『ドラマ』演技力の高さ「視聴者の胸を打つ演技」

今期のドラマでフジテレビ系『波うららかに、めおと日和』が予想外の高い支持を獲得し、主演の芳根京子の評価が急激に高まっている。とくに女性からの人気が大きく上昇しているのが特徴的で、同性の共感を集めるヒロイン女優として飛躍していきそうだ。
今期のドラマでは、永野芽郁の出演で別の意味でも話題になったTBS系日曜劇場『キャスター』や北川景子が熱演を見せているフジテレビ系『あなたを奪ったその日から』、NHK朝ドラが酷評された橋本環奈のリベンジが注目されたテレビ朝日系『天久鷹央の推理カルテ』、中井貴一や小泉今日子らベテラン勢の円熟の演技で魅せるフジテレビ系『続・続・最後から二番目の恋』などの前評判が高かったが、いずれも思ったほどの盛り上がりにはならなかった。
今期のドラマ全体が低調ともいえる状況だが、そんななかで視聴者から予想以上の高評価となっているのが『波うららかに、めおと日和』だ。
『波うららかに、めおと日和』は、西香はち氏による同名コミックの実写化。昭和11年(1936年)を舞台に、恋愛経験すらないヒロインの江端なつ美(芳根)が突然舞い込んだ縁談によって帝国海軍の中尉・江端瀧昌(本田響矢)と「交際ゼロ日」で結婚し、互いに不器用な新婚夫婦の歯がゆくも愛らしい、甘酸っぱい時間が描かれるラブコメディだ。
昨今のドラマ界は、SNSウケを狙った謎解きのストーリー考察や続きが見たくなる刺激的な展開といった仕掛けが全盛だが、本作にそれらの要素はなし。基本的に昭和初期の初々しい新婚夫婦の日々が微笑ましく描かれるのみだ。
現代の視聴者からすれば「退屈」「地味」と思われかねない内容だが、これが考察での盛り上がりを狙った情報量の多いドラマやショッキング展開が続く作品に疲れた視聴者たちの心をつかみ、「癒されるドラマ」として想定外のヒットとなっている。
この作品の成功の大きな要因となったのが、主演の芳根の演技力の高さだ。
芳根は恋愛経験がなく男性への免疫もないという初心なヒロインを好演し、突然始まった新婚生活の中での困惑や喜びを、くるくると変わる表情やかわいらしいしぐさで表現。夫の名前を呼ぶだけで照れてしまったり、噛み合わない夫婦の会話でユーモラスな掛け合いをしたりと、視聴者をキュンキュンさせる演技を連発している。
芳根は現在28歳で、2016年度後期のNHK朝の連続テレビ小説『べっぴんさん』で主演を務めるなどキャリアは豊富。本来そのくらいの年齢でキャリアもあるとなると、これほどの初心な女性を演じるのは難しくなるが、今作では完全に「あまりにもピュアな清楚系ヒロイン」になりきっている。
わざとらしくピュアなキャラクターを演じると「ぶりっ子」「あざとい」といった印象になり、女性視聴者からの反発を招きかねないが、芳根の演技はむしろ同性からの支持が高い。それだけ彼女の演技がうまく、ナチュラルにキャラクターを演じていることの証拠といえるだろう。
今作で改めて支持を大きく高めている芳根の女優としての評価について、前出の記者はこのように語る。
「飾り気のない朗らかなキャラクターと品の良いルックスでバラエティでも好感度の高い芳根だが、デビュー当時は引っ込み思案で、オーディションでは不合格が続いた。しかし、担当マネージャーの親身なアドバイスもあって、自分の気持ちを素直に出せるようになり、女優デビュー翌年の2014年に『物置のピアノ』で映画初出演にして初主演を飾り、同年にNHK朝の連続テレビ小説『花子とアン』で朝ドラデビュー。2016年には、2261人の応募者の中からオーディションでNHK朝ドラ『べっぴんさん』のヒロイン役を勝ち取り、デビューからわずか3年で人気女優の仲間入りを果たした。
天性の演技力もあるだろうが、芳根は中学2年生の時に『ギランバレー症候群』を発症し、約1年は学校へ通うことすら苦労した経験がある。この難病を克服した不屈の精神が、芝居への情熱にもつながっているのだろう。『べっぴんさん』のチーフプロデューサーは、芳根の芯の強さや真っ直ぐさ、けなげさを見て、ヒロインに決めたと語っている。その言葉どおり、売れっ子女優になっても自分を見失わず、常に全力で役に挑む姿勢が視聴者にも伝わり、好感度女優と呼ばれる存在になったのだろう」
売れっ子女優になってもひたむきさを決して失わない、演技への純粋な情熱が好感度につながっているようだ。前出の記者は続ける。
「芳根は約6年ぶりとなる舞台『先生の背中〜ある映画監督の幻影的回想録〜』(上演中)に7月下旬まで出演するが、今年前半だけでも1月期の『まどか26歳、研修医やってます!』(TBS系)、今期の『波うららかに、めおと日和』と2期連続でドラマ主演を務め、11月公開予定の映画『君の顔では泣けない』でも主演を飾る。
これほどスケジュールが立て込んでいると、事務所としては拘束時間が長い舞台は避けたいところ。それでも今回の舞台への出演を選んだのは、芳根の芝居に対する向上心によるところが大きいに違いない。現状に満足せず、常に新しいことに挑戦する姿勢が、視聴者の胸を打つ演技につながっているのだろう」とサイゾーオンラインは報じた。
編集者:いまトピ編集部