『フィットネスジム』ランキング、8年連続1位「決して安いとはいいがたい」

●この記事のポイント
・「ゴールドジム」、オリコンの「顧客満足度調査」フィットネスクラブ部門の総合ランキングで8年連続1位
・競技志向のマッチョな会員が多いイメージがあり、決して安いとはいいがたい料金プランや、24時間営業をしていない店舗が多いという特徴
・鏡の位置など、あえて他人のトレーニングが見やすいようなレイアウトにするなど、お客様同士で刺激を与え合い、ジム全体を活気づけるような工夫
近年、気軽に通えるフィットネスクラブが増えているなか、「ゴールドジム」は競技志向のマッチョな会員が多いイメージがあり、決して安いとはいいがたい料金プランや、24時間営業をしていない店舗が多いことで知られる。「万人が通いやすいジム」というよりは、入会するのに一定の勇気・覚悟がいると感じている方々も多いのではないだろうか。そんなゴールドジムだが、実はオリコンの「顧客満足度調査」フィットネスクラブ部門の総合ランキングで8年連続1位を獲得しているのだ。そんな根強い人気の秘密を探るべく、ゴールドジムジャパンを運営する株式会社THINKフィットネスの代表取締役社長・手塚栄司氏にインタビューを行った。
●目次
ランキング8年連続首位キープも「実感はない」
同業他社と一線を引く「ゴールドジムらしさ」
一部でしか24時間営業をしていない理由とは
メインターゲット層以外を対象としたコンテスト
アメリカ合衆国を中心に、各国で展開される世界最大級のフィットネスクラブ「ゴールドジム」。その歴史は古く、今年でアメリカ本国では60周年、日本では30周年を迎えた老舗フィットネスクラブだ。1977年にアーノルド・シュワルツェネッガーが出演したボディビルダーのドキュメンタリー映画『パンピングアイアン』が公開され、その知名度は一気に上昇。ゴールドジムは「世界でもっとも有名なジム」と呼ばれるまでになった。
ランキング8年連続首位キープも「実感はない」
まずは顧客満足度ランキングで8年連続首位を獲得したことについて、率直な感想を訊いた。ちなみに、前出・オリコン「顧客満足度調査」では「24時間ジム」部門は別に設けられており、「エニタイムフィットネス」などはそちらに分類されている。
「いまでもまだ会員であるお客様からクレームやご指導をいただくことが多いため、1位を取らせていただいたという実感はないです。お客様からの声に対してすぐ改善する方針で活動していますが、まだまだ成長過程であると感じます。
アメリカで創業したゴールドジムが初めて海外にフランチャイズ出店したのが、日本なんです。本国の熱い想いを忠実に再現した日本の店舗をつくるため、アメリカのゴールドジムに日本のスタッフを連れて行くようにしました。コロナ前は毎年50~80名のスタッフに本場の空気を体感してもらい、アメリカ本国のゴールドジムの良いところと悪いところを学んでもらい、それを持ち帰って日本流に再現することに努めました。
そのように本場のトレーニングジムに近いものをつくろうとスタートし、そしてお客様が厳しい目線でいてくれたことが功を奏したのではないでしょうか」(代表取締役社長・手塚氏)
ではゴールドジムの特徴とは?
「ジムの雰囲気は来るお客様によって変わりますが、トレーニングという同じ目的でがんばっている人に対しての刺激があるのではないでしょうか。ゴールドジムは鍛えることが好きなお客様が多いのでお互いに高め合えるのだと思います。鏡の位置など、あえて他人のトレーニングが見やすいようなレイアウトにするなど、お客様同士で刺激を与え合い、ジム全体を活気づけるような工夫をしています」(同)
同業他社と一線を引く「ゴールドジムらしさ」
他のフィットネスクラブと比較した場合の違いや優位性などについても聞いた。
「フィットネス業界で我々は異質だと思います。競技志向の利用者が多いのが、他社との最大の違いかもしれません。我々のマーケットはそこまで大きくありませんが、その分ターゲット層が絞られているため、サービスを集約しやすくなっていると感じます。他のフィットネスクラブは施設のすばらしさや安さ、そして通いやすさなど、弊社とは異なる魅力やニーズがあります。多様性のあるニーズからさまざまな施策が運営されていることは、業界全体として素晴らしいことです。
我々は競技性特化型なのでそれが優位性である一方、それが通いづらさや入会しづらさを感じる方々もいる理由だと分析しています。よく『一般的な人がもっと気軽に通いやすいようにしてほしい』というお声をいただきますが、そのニーズに応えている他のフィットネスクラブがあるので、他社と同じような方針では考えていません」(同)
しかし、ゴールドジムの公式サイトでは、女性のダイエットやシニアの健康維持など、筋肉を鍛えること以外のコースも提案している。それについてはどういった考えなのだろうか。
「ゴールドジムが日本に来たばかりの30年ほど前は、まだ女性は筋トレに対してあまり好意的ではありませんでした。しかし時代とともに価値観が移り変わっていき、実際女性がトレーニングをするとどのように変化していくかというのを実証していくと、自らの力で自分を変える楽しさを知っていただけるようになったのです。そこで弊社の企業方針に合う形で女性向けといったコースなども提案しています」(同)
競技性特化型という根幹となる企業方針はブレさせないようにしつつ、それでいて“0か100か”の両極端の思考ではなく、時代に合わせた柔軟性も持ち合わせているということのようだ。
一部でしか24時間営業をしていない理由とは
「とはいえ弊社の会員数は十数万人で、他のフィットネスクラブに比べて少ない方でしょう。ただ、同じ想いを持ったお客様が集まっているおかげでご愛顧いただけて、顧客満足度の高さを維持できているとも言えます。業績もコロナ禍以降は黒字続きで、売り上げは伸びていますので、大変ありがたく思っています」(同)
また、ゴールドジムは、基本的に24時間営業をしていないジムのほうが多いのもひとつの特徴。近年、「エニタイムフィットネス」や「chocoZAP」といった24時間営業をしているジムが多いため、“24時間営業していないフィットネスクラブ”は珍しい。
「あまり知られていないかもしれませんが、実は日本で初めて24時間営業のジムをやったのはゴールドジムなんですよ。2000年に東京・大井町で日本初の24時間営業のフィットネスクラブを立ち上げ、現在も全国約20店舗が24時間営業しています。
ただ、24時間営業を始めたきっかけはフィットネスクラブのトレーナー向けだったんです。日中や夜の早い時間帯は教える立場のため、自分のトレーニングをする時間がなかなか取れないというトレーナーたちからの声が多くあり、深夜にもジムが開いていたら便利だということで、24時間営業を実現した次第です。
そういった背景で24時間営業のジムを設けているので、弊社としてはいまでも深夜帯のユーザーはトレーナーという認識で、あくまでメインのビジネスモデルとして考えていないため、20店舗程度にとどまっています」(同)
メインターゲット層以外を対象としたコンテスト
そんな手塚氏が今後、ゴールドジムで挑戦したいこととは?
「従来と比べて利用者の年齢層の幅が広がったので、幅広い年齢層がハードにトレーニングできる環境を作りたいと考えています。モチベーション維持のために、少しでも目標を持ってトレーニングに取り組んでもらうための施策を計画中です。
具体例を挙げると、たとえば高校生などの若者向けに『マッスル甲子園』というコンテストを開催する予定です。また60代以上の方に向けては『還暦スター誕生』というイベントも考えています。こちらはモデルを目指していたような方が出ることができるもので、ボディビルコンテストだけではなく、歌と踊りなども披露してもらう予定です。
こういったコンテストやイベントをモチベーションに、トレーニングに励んでいただけたら嬉しいですね。健康のためという動機だけだとなかなか精が出ない人にも、目標を持ってトレーニングしてもらえれば幸いです」(同)
他に70歳向けの施策もあるそうだ。
「人生100年時代ですから、50歳から第二の人生が始まったと考え、70歳を『第二成人式』と謳う企画を考えました。成人式をジムでやって、元気が良ければ大いに暴れてもらって結構です。若い頃は同世代と会う機会は多いですが、歳をとるにつれて集まる機会が限られてきてしまいますよね。ですから弊社で『第二成人式』を企画して、そこで出会った仲間とまた一緒にトレーニングしていくなど、孤独にならないで過ごせるような場をつくりたいんです」(同)
手塚氏はフィットネスを始める際に、「明日の元気、未来の健康。そのためのフィットネスである」ということを大切にしてほしいと語る。自分の未来のために努力すると考えれば、フィットネスは続けやすいそうだ。
――多くの人がフィットネスによって健康的な生活を得られるため、ゴールドジムは弛まぬ企業努力を続けている。そして、それが顧客満足度の高さに繋がっているのだろうとビジネスジャーナルが報じた。
編集者:いまトピ編集部