2025/9/7 16:18

愛媛県+109.1%『外国人宿泊者数』が2倍に急増

びっくり

今年1~6月の訪日外国人数(推計値)が2151万8100人(日本政府観光局発表)となり、過去最も速いペースで年間2000万人を超えるなど、引き続きインバウンドの増加傾向が続いている。各都道府県の外国人延べ宿泊者数の増加率にはムラがあるが、愛媛県の2024年の外国人延べ宿泊者数が19年比で+109.1%、2倍以上の増加と、都道府県別の伸び率では東京都や福岡県を抑えて2位になるなど、大幅に伸長していることが注目されている。その背景には愛媛県の積極的かつ地道な取り組みがあることは、あまり知られていない。同県に取材した。

なぜ愛媛県の外国人延べ宿泊者数は大きく伸びているのか。愛媛県観光国際課は次のように説明する。

「前提として、松山空港に発着する国際線の便数が大きく増えたというのが大きな要因です。24年はソウル線が2019年の週3便から週14便になり、台北線が復活し、新たに23年から釜山線も加わりました。そうしたなかで県としては大きく2つのフェーズで取り組みを行ってきました。

 まず、国際線の直行便の就航による旅行客の増加は一過性で終わらせては意味がないので、新規旅行客とリピーターの確保のために、旅行会社やメディアを通じたプロモーションに力を入れてきました。特に力を入れてきたのが、韓国からのゴルフ客の獲得です。

 韓国ではコロナ禍でゴルフをする人が急増するという現象が生じており、プレイ料金が日本の3倍ぐらいするため、訪日してゴルフをしたいという需要は増えてくるとの予想があったのですが、愛媛県は道後温泉や松山市の中心地から1時間圏内にゴルフ場が16カ所もあるんです。この利点を活かさないわけにはいかないということで、コロナ禍が明ける前くらいから、ゴルフ場や韓国の旅行会社などとゴルフ旅行者の誘客について話し合いをさせていただき、旅行会社向けに県内ゴルフ場の視察ツアーを実施したり、愛媛県ゴルフ協会の協力をいただき、旅行会社とゴルフ場をつないでいくような取り組みを行ってきました。これによって、ゴルフ場の韓国からの旅行者の受け入れ態勢の整備も進み、現在では日本人の利用者が少ない平日に多くの海外の方が来ていただけるようになっています。

 このほか、松山市中心地はコンパクトシティになっているので、ホテルや道後温泉、松山城、大きな商店街を行き来しやすく、狭い範囲で買い物も観光も温泉も楽しむことができるということで、韓国語の飲食店マップを作成したり、カフェやパンのお店など、韓国からの旅行者の趣味趣向にあったマップを作成するといった細かい取り組みも行っております」

従来からある観光資源の活用にも積極的に取り組んでいるという。

「欧米豪(欧米・オーストラリア)からの旅行者も増えているのですが、その要因の一つに、24年に愛媛県とAirbnb Japanが包括連携協定を結ばさせていただいことがあります。これまで県内にはAirbnbに登録している宿泊施設は少なく、また愛媛県のような小さい県に欧米豪からあらゆるタイプの旅行者に来てもらうというのは非常にハードルが高かったので、どこかに絞った形でプロモーションしなければならないと考えていました。

 いろいろと調査してみると、2019年に広島県に来られたオーストラリアの方は約13万3000人だったのに対し、愛媛県は約3000人しかいませんでした。広島から愛媛まではフェリーで1時間くらいなので、まず広島から観光客を引き込んでくる方策を検討しました。また、オーストラリアの方は旅行日数が非常に長くて消費単価も高く、サイクリングやトレッキングが好きな方が一定数いるということが分かりまして、トレッキングですと四国遍路、サイクリングですと、しまなみ海道があるので、そこを観光資源としてPRの強化をしていきました。

 また、サスティナブルツーリズムに関心を持つ方も多いということで、サスティナブルの国際的な表彰を受けた大洲市も有力なコンテンツとして、オーストラリアに特化したプロモーションを推進してきました。そうしたなかで宿泊場所の確保や認知度向上という観点でAirbnbさんと連携させていただくことになり、セミナー開催等により多くの宿泊施設に登録していただきました。

 さらに、本県単独事業として古民家等を活用した宿泊施設の整備などの観光集客に繋がる取組みに支援を行うなど、宿泊客の引き込みに努めてきました。


大洲では空き家であった古民家などを活用してリノベーションし町一つを丸ごとホテルに見立てて、町の中を回遊してもらうというコンセプトで、地元自治体や金融機関、観光事業者等が連携し、NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町として30室以上の宿を整備してインバウンドの方々に泊まっていただいているほか、県内の島では宿泊施設に2~3週間泊まれられるようなインバウンドの方々も多くいらっしゃるので、昔ながらの町並みやゆったりと流れる時間の魅力というのを伝えていくプロモーションも進めております」

 愛媛県はインバウンドの受け入れの環境整備として補助金制度を設けており、外国人観光客の誘客のための古民家改装やレストラン開業などを支援している。


プロモーションの強化という面ではSNS上での情報発信やインフルエンサーへの積極的な働きかけにも力を入れているという。

「海外の旅行会社さんの視察やインフルエンサー、メディアの方に来ていただいた際には、広島から入るルートを紹介したり、しまなみ街道を実際に走っていただいたり、さまざまな体験を実際にしていただくことで、積極的にPRしていただけるように取り組んでおります。

 具体的には、たとえば韓国のゴルフ関連メディアやインフルエンサーの方に実際にゴルフ場に来て体験していただいたり、オーストラリアの大手旅行雑誌に来ていただいて大きく取り上げていただいたり、視察に来た旅行会社に商品造成していただいたりといった、地道な活動を行っております」

 気になるのは、外国人旅行者の増加が県の経済にどのような影響をもたらしているのかという点だ。

「これまでインバウンドが0人だったゴルフ場に多くのインバウンドが来られるようになったり、ホテルや飲食店からは韓国の方の利用が非常に増えたというお話もお聞きしています。松山市の街中では、ハングル語のメニューや看板を用意する飲食店も増えており、夜遅い時間帯に大手ディスカウントストアなどでたくさんのお土産を購入する光景もみられるようになりました。JRさんが鉄道での周遊県内観光地を散策するフリー切符を扱い、韓国の方の購入が関東で販売が大幅に増えているというお話もお聞きしており、さまざまなかたちで経済効果が生まれていると考えております」

 愛媛県としては、さらなるインバウンド誘客に向けて、大洲などの県南部や東部のしまなみ海道をはじめ広い範囲を周遊するルートの造成などにも取り組んでいくという、とビジネスジャーナルが報じている。

愛媛県の外国人宿泊者数、なぜ2倍に急増?県が積極的に誘客策、海外インフルエンサーにも働きかけ | ビジネスジャーナル愛媛県の外国人宿泊者数、なぜ2倍に急増?県が積極的に誘客策、海外インフルエンサーにも働きかけ | ビジネスジャーナル

編集者:いまトピ編集部