ニッチ分野に目をつけて海外進出を果たす中国企業が増えている。中では、スマートペット用品が有望視されている分野の一つだ。市場調査会社Global Market Insightsは、2022年時点で世界のペット関連市場は2800億ドル(約43兆4000億円)規模に達しており、28年にはスマートペット用品市場が200億ドル(約3兆1000億円)規模に拡大すると予測している。

チャンスに満ちたスマートペット用品市場に狙いを定めたのが、猫用スマートトイレを手がける新興企業の「CATLINK」だ。2017年の設立当初からスマートペット用品の開発にフォーカスし、中国のサプライチェーンをいかして、海外で事業を展開するという目標を掲げてきた。同社は業界に先駆けてペット用品にIoT技術を導入、2年を費やして開発した猫用トイレを東南アジア市場で検証した上で、米国市場でも発売した。現在は猫用トイレのほか、自動給餌器、自動給水器、見守りカメラなどを40カ国以上で販売している。

CATLINKの王敏君CMOによると、同社の商品は日本や韓国などでシェア1位を獲得し、海外市場の売上高は1億元(約21億円)を突破したという。

最初に手がけた商品は2019年に発売された猫用トイレ「SCOOPER」。多頭飼いでも複数の猫を識別でき、健康モニタリングやワンタッチ自動糞処理機能などを備える。大容量コンテナを内蔵する上位機種なら猫1匹で最長15日間使用でき、家を空ける場合でも安心だ。発売以来、一番の売れ筋商品となっており、これまでに世界で30万台以上を売り上げた。

CATLINKの猫用トイレや給餌器などのスマートデバイスは、いずれもスマートフォンのアプリで猫の体重や食事量、トイレの回数などを確認でき、個別の猫の健康レポートを作成できる。排便に異常があれば、アラートを発して飼い主に知らせる。これらの機能を実現できたのも、CATLINKが製品開発に多額の資金を投じているからだ。2023年の売上高に占める研究開発費の割合は50%に上ったという。

さらにCATLINKは多くのユーザーが多頭飼いであることに着目し、複数の猫を識別する技術を開発した。最初に採用したのは、トイレに計量装置を組み込み、体重で固体を識別する方式だ。しかし、体重が同じくらいの猫だと正確に識別できず、精度には限界があった。その後、スマート給餌器に猫の「顔認識」技術を搭載することで、識別精度を80%に高めることに成功した。

海外進出に際してCATLINKが最初に選んだ市場は、地理的に近い東南アジアだった。現地の販売代理店と緊密に連携することで、目覚ましい業績を上げた。

東南アジア市場で成功を収めると、次は世界最大のペット市場を抱える米国へ進出。販売ルートを米アマゾンに絞り、一気に市場に攻勢をかけた。アマゾンに出品されている競合品はそれほど多くなく、しかも米国ブランドの商品は高額だった。例えば猫用トイレはCATLINKの商品が599ドル(約9万円)なのに対し、米国ブランドの商品は999ドル(約15万5000円)もする。CATLINKは2023年、米アマゾンで猫用スマートデバイスと関連商品5種類を発売し、ブラックフライデーのセール期間中に猫用トイレカテゴリで第1位を獲得、年間売上高は150%増加した。

市場が拡大すれば、それだけ競争も激しさを増す。CATLINKによると、2023年の後半から多数の競合品が登場し、OEM生産で金型コストを抑えて価格競争を巻き起こしているという。とはいえ、王CMOはペット用スマートデバイス市場がまだ形成期にあるとし、商品に対するユーザーの認知度もそれほど高くないことから、市場にはさらなる拡大の可能性があると見ている。

*2024年5月8日のレート(1ドル=約155円、1元=約21円)で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)