「ホタルイカ 生はダメだよ 旋尾線虫」

【映像】時々口から出てくる? 回虫の外見と「かるた」

 ホタルイカに寄生する寄生虫を軽快なリズムで表現しているのは、57種類の寄生虫を元に制作された「寄生虫かるた」だ。

 寄生虫の名前は読み上げられるものの、札には寄生虫の写真やサイズしかヒントがない。寄生虫かるたを制作したのは、寄生虫学が専門の北陸大学 松村隆弘助教だ。

 「一般の人がこれをかるたとして遊ぶのはかなりレベルが高い。『あいうえお』がついてるわけではなく、写真の寄生虫が何か分かってやっと取れる。このかるたは臨床検査技師や医者を目指す学生が寄生虫の勉強をゲーム感覚で始められる教育ツールだ。裏面には感染経路や病害、予防法などが記載されていて勉強できるようになっている」

 例えば、ホタルイカを生食する場合、厚労省は「旋尾線虫」対策として「マイナス30度で4日間以上凍らせる」など適切な処理を呼び掛けているがそういった予防法も、この寄生虫かるたの裏面には記載されている。

 ただ、見た目が気持ち悪く、人間に害を与えることから、忌み嫌われる存在の寄生虫。松村助教は、そんな寄生虫の知られざる魅力を語った。

 「日本ではかなり減ってきているが『回虫』はミミズのような姿で30センチほどある。ミミズより筋肉質なので触り心地はいいが、こいつ時々口から出てくる。次に、そこそこ人気がある『ランブル鞭毛虫』は目みたいなものが二つあって、鞭毛が生えており、しゃもじ型のような形でモンキーフェイス(猿の顔)のように捉えられている。木の葉が舞い落ちるように動き、鞭毛をひらひらと動かしている様子も可愛いが、下痢を引き起こすので嫌われている。『クドア』はお花型で可愛いがこちらも食べると下痢になる」

 自腹で制作費100万円を捻出し、550セットを去年8月から販売開始。「5年でなくなれば…」と想定していたところ、医療系の学生から予想以上の需要があり、発売から1年も経たないうちに増刷が決まったという。

 戦後の衛生環境が悪かった時代に、多くの健康被害をもたらした寄生虫。衛生環境の改善と共に、研究者や検査技師の努力によって今の時代があることを忘れてほしくないという松村助教の思いが、寄生虫かるたには込められている。

 「今の日本では、臨床検査技師や医者でさえも寄生虫感染症に触れる機会が本当に少ないが、感染症については忘れていけない。なぜなら、アニサキスやクドアなどはなくならない感染症であり、検査する人、診断できる人が必要だからだ。ぜひ皆さんで寄生虫をバックアップしてほしい」
(『ABEMAヒルズ』より)