2024年の米国女子ツアーに挑戦している日本勢のドライバースイングをツアープロコーチの石井忍が解説。今回は稲見萌寧のスイングを深掘りしていく。


2021年の「東京五輪」で日本勢史上初の銀メダルを獲得、統合となった20-21年シーズンには賞金女王に輝いた稲見は24歳にして日本ツアー通算13勝を果たしている。そして昨年日本で開催された米国女子ツアー「TOTOジャパンクラシック」で米初優勝を挙げた。この勝利により、今シーズンの米ツアー出場権を獲得し参戦している。

そんな稲見のスイングについて石井は「ややワイドスタンスで、“八の字”が変わらない一軸スイング。その場で回転しているのでプレッシャーに強いですね」と話す。スタンスが広いと重心移動がされやすく、横の力を使って飛ばす人が多い。稲見の場合はスタンスが広くても、体が横に移動することのない一軸スイングとなっている。

それでは“八の字”が変わらないというのはどういうことなのか?

「正面から見たときの足の“八の字”が変わらない。バックスイングのときに右にスウェーしたりして軸が動くと正面から見たときの足の角度が変わってしまいます。稲見さんの場合は、足の位置が変わらないので軸がほとんど変わらず、その場で回転しているからプレッシャーにも強いでしょう。踏み込んでも“ハの字”が変わらないですね」。つまり、バックスイングのときに下半身の横移動がなくアドレス時に決められた軸が保たれているということ。それは両足の位置が変わらずに上半身の回転ができていることになる。

さらに「ずっとスイング中の姿勢が良くて、軸が移動しないし、斜度も変わらない」と軸のブレが起きにくく、前傾姿勢の角度も一定をキープできている。「“一軸”によって左への回転スピードをどんどん上げながらも、ヒッティングポイントを遅くしてしっかり左に振り抜きながらフェードを打っています」と体のブレが少ないためインパクトで捉える位置が安定。軸がしっかりしているからこそ、体の回転スピードを上げてもスイングにブレが生じない。

ダウンスイングでは「クラブが地面と平行になるぐらいのポジションで、左肩の上がり具合が少ないので、ボールへの入射角が安定します」と、ダウンスイング時でも肩が低く回ることで、ボールに対してアッパーブローの度合いが少なくなることもブレない要素だ。

強い体幹によって放たれる安定したフェードボールで、米ツアー通算2勝目に挑んでいく。

■石井忍(いしい・しのぶ)1974年生まれ、千葉県出身。東京学館浦安高等学校、日本大学のゴルフ部で腕を磨き、98年プロテスト合格。2010年にツアープロコーチとして活動を始め、多くの男女ツアープロを指導。また「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアへの指導にも力を入れている。


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