ピン『G430 MAX 10K』やテーラーメイド『Qi10 MAX』を中心にMOI(慣性モーメント)を極限まで高めた“曲がらないドライバー”がプロアマ問わず大人気となっている。最近は”10K”ヘッドなど『MAX』と名付けられたモデルが売り上げ上位を占める。過去の“高MOIドライバー”にはさまざまな弱点があり、敬遠するゴルファーも少なくなかったが、最新の『MAXモデル』に何が起きたのか? ギアコーチの筒康博とクラフトマンの石塚昌広が分析する。


「MOI」とは「Moment of inertia」の略で、単位は「g・cm2」。スイング中、ヘッドはボールに向かって回転運動をしているが、MOIが高いことで、手先の動きでフェース向きが変わりにくくなる。また、インパクトでボールと衝突した際にも、フェース向きやロフト角が変化しにくくなるため、「高MOIドライバー」はミスに強く、曲がりにくいと言われる。最近話題の”10K”は、左右MOIと上下MOIの数値の合計が10,000g・cm2を超えたヘッドを意味する。実際に世界最強と言われるネリー・コルダ(米国)は、”10Kヘッド”の『Qi10 10K』を使用して米国女子ツアーでなんと5連勝を果たした。

MOIを高めたドライバーは以前からあるが、ノーマルモデルや低スピンタイプのヘッドに比べるとあまり人気がなかった。ヘッドの異形化や振りにくさがその理由だが、筒はヘッド構造の進化で『MAXモデル』のデメリットは払拭されていると話す。

 「カーボンを複合して余剰重量を生むなど、ヘッドの作り方はどんどん進化しています。実は、その恩恵を一番受けているのが“高MOIドライバー”『MAXモデル』です。以前はヘッドを独特な形にして重くすることでMOIを高めたモデルが多く、振り心地などのフィールに大きな影響を及ぼしていました。一方で最新モデルは、ヘッド重量をコントロールしながら、さまざまな性能を高めることが可能になっています。重心バランスが良くなって気持ち良く振れますし、ミスヒットでも曲がらないから思い切り叩くことができる。適度な操作性を持った『MAXモデル』も登場していますし、これからプロアマ問わず、使用者が増えていくことは間違いないでしょう」(筒)

『MAXモデル』で注目したいのが、ヘッド重量と重心角だ。ヘッドが重い方が当然MOIも高くなり、ミスヒットに強くなる。

「乗用車よりもトラックの方が直進性が高いように、ヘッドが重いほどMOIは高くなります。オートマチックに打てること、ミスヒットへの強さを重視するなら重めのヘッドを選びましょう。操作性を高めたいなら、軽量ヘッドがオススメです」(筒)

重心角はヘッドターンの度合いに大きく影響する。重心角が小さいと重心距離が短めで操作性が高くなるという。

「クラブを置いたときに、フェースが上を向く角度が重心角で、重心深度の他に、重心距離をチェックすることもできます。重心角が小さいヘッドは重心距離が短めで、適度な操作性が備わっています」(石塚)

他のモデルに比べて、サブ的な扱いだった『MAXモデル』だが、最新モデルは劇的な進化を遂げた。今後は、幅広いゴルファーに合う万能モデルとして、ドライバー選びの軸になっていくだろう。


■筒 康博
つつ・やすひろ/過去の名器から最新クラブまで豊富過ぎる知識を持つ通称“ギアコーチ”。インドアゴルフレンジKz亀戸店でヘッドコーチとして、日々アマチュアの悩みに応えている。

■石塚昌広
いしづか・まさひろ/インドアゴルフレンジKz亀戸店内にあるゴルフ工房「REAL SPEC GOLF」オーナー。鋭い感性とクラフト知識で最新ギアの性能を的確に分析する。

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