21日、東京・品川にてキヤノンがレーザー距離計の新製品発表会を開催。「キヤノン初となるゴルフ市場向け製品として、撮影機能付きのゴルフ距離計『PowerShot GOLF』(パワーショット ゴルフ:オープン価格)を2024年7月下旬に発売します」と、同社。既に3月の「ジャパンゴルフフェア」で展示し、関係者や販売店から発売日のアナウンスが待たれていた新製品だ。


レーザー距離計市場は、アメリカの「ブッシュネル」や、カメラ業界ではライバルの「ニコン」など老舗メーカーに加え、「ショットナビ」「ボイスキャディ」「ゴルフバディー」「イーノウ」「ファインキャディ」などなど、多くのメーカーが小型・軽量化を加速させてひしめき合う状況だが、キヤノンはそれだけではなく、同社らしい画像と動画の『撮影機能』を武器に市場参入。背景には「ゴルフ用途にしか使えない」など、様々なゴルファーの声があったという。
 
■撮影機能で“振り返り”がより鮮明に
 
自身も年間50ラウンドする熱狂的なゴルファーで、30年以上デジタルカメラ開発に携わってきた同社開発・有賀一人氏は「ラウンド時の撮影と“振り返り”に撮影機能を活用して欲しい」と、対談を務めた元ツアーキャディの進藤大典さんに熱弁を振るう。「ラウンド翌日の練習場で今までスコアカードを見て記憶で振り返って反省していた所が、失敗した時のシチュエーションの写真がそのまま見れるので、(練習場でも)気持ちの再現や緊張感の再現がしやすい」と、自身の使い方を紹介。
 
これに進藤さんも「より鮮明にイメージしやすいし、めちゃいいじゃないですか!」と応じる。そして、有賀氏から「初心者ゴルファーにとっても、コースマネジメントは必要ですか?」と問われ、「皆さんに深く知ってもらいたいのは、自分がミスした時の距離を把握してもらいたい」と熱く語る。
 
「例えば、ショートホールの右手前のピン、手前はバンカーで、その手前に池があります。150ヤードで7番でベタピンのバーディと思うけど、プロはリスクマネジメントする。スライスとかヒッカケとかヒールに当たって薄い球など色んなミスで、思いもしない手前のバンカーのさらに手前の池に入っちゃうこともあるので、ピンまでの距離だけじゃなしに、【ミスした時の距離も知ってもらいたい】なと」(進藤さん)
 
こういった大ミスでひたすら項垂れるのはアマチュアにとって“あるある”だが、すかさず『PowerShot GOLF』で撮影し、大ミスの距離表示と共に記録しておくべきだと言う。「7番で150㍎どころか、ミスの種類次第で120㍎もある」と把握すれば、次に同様のミスは少なくでき、リスクマネジメントできればスコアは「全然違う」と進藤さん。
 
■小型・軽量でも「驚くほど速く当たる」
 
『PowerShot GOLF』は、メモリーカードで大量の画像(約1110万画素)や動画(一度の最長59秒)が保存でき、倍率が約6倍/12倍。ポケットに入るコンパクトサイズ(幅31.0×高さ58.9×奥行91.2mm)で、151gの軽量だが、気になるのは軽さ故の「手ブレ」。これに関して、多くの他社品も使ってきた進藤さんはこう言う。
 
「最近、競技に出る機会がありまして、競技って自分の番になると『早く行かなきゃいけない』と焦りますよね。その時にパッと当てた時、あまりに距離が正確に速く出過ぎて『あれ、ちょっと違う所に当たっちゃったんじゃないかな』って、二度見じゃないけど、2度チェックするぐらい速いんです。それぐらい正確なので凄く驚いて。
 
試しに、わざと手ブレさせようと雑に手を動かしても、すぐ当たっちゃう。(他社との違いは)やっぱり総合力じゃないですかね。例えば『あのメーカーは正確だけど重いよね』とか、『このメーカー軽くていいけどなんか距離バラバラだよね』とか、一方でちょっと……って、色々やっぱあると思う。なので、これがというより総合的に良い」(進藤さん)
 
■レーザー距離計“素人”の記者も試すと?
 
会場では実機を試す「タッチ&トライ」イベントも行われていたため、“レーザー距離計のド素人”である記者も試してみた。進藤さんの「驚くほど速く当たる」とのコメントを囲み取材で有賀氏に「他社品と性能比較した数字は出せるか?」と聞くものの、「他社が何秒で自社が何秒などの回答はできません」とのこと。進藤さんのコメントは自分で確かめるしかなさそうだ。
 
記者は10年以上前に重くて大きな他社品や、5年程前にやや小型・やや軽量の他社のフラッグシップモデルを試したことがあるが、いずれも購入には至らず。プレーに余裕がないため、一発ですぐに当てられずに焦ってしまい「不器用で手ブレしやすく焦りがちな自分には不向き」と、レーザー距離計にはかなり苦手意識を持っている。
 
ところが、『PowerShot GOLF』は確かに一発ですぐ当たりまくりで驚く。他社の上位機種では【手ぶれ補正機能】が画面内をかなりスローに表示させて対象に当てやすくしているが、それよりキヤノン製は画面内の動きが遥かにクイック。最初は「ここまで軽いとこうなるよね…」と思ったが、その画面内のクイックさでも、当てたい所をどんどん切り替えてビシビシ当たっていく。
 
レーザー距離計をほぼ試さない“ド素人”故だが、難点は「意図せずに撮影し過ぎてしまうこと」くらいだろうか。ボタン操作に慣れない“レーザー距離計素人”の記者は、ついつい長押しになることが多く、撮影枚数はわずか数分の使用でかなりかさんだ。ただ、この部分も「決して、撮り逃しがないように」という、“キヤノンらしい”設計意図なのかもしれない。(編集部M・K)


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