狛江市は、多摩川に面した多摩丘陵の東南端に位置する街です。新宿駅からは、小田急線で20分程度の近さ。総面積6.39平方キロメートルと、全国で2番目に小さな市ですが、自然豊かな都心近郊の住宅地として発展しています。今回は、狛江市の魅力と住宅事情について紹介します。

多摩川の風景(筆者撮影)

東京都のベッドタウンとして発展したコンパクトな街

狛江市は、豊かな自然に囲まれた総面積6.39平方キロメートルのコンパクトな街です。多摩川の左岸、武蔵野台地の南の縁に位置し、市の北を野川が、南を多摩川が流れています。市内には遺跡が多く残されており、古くから人々の暮らしが営まれていた地のようです。

多摩川沿いの風景(筆者撮影)

江戸時代に畑地の多い農村であった狛江は、廃藩置県後、神奈川県北多摩郡に属し、その後に北多摩郡は東京府へ移管されました。1927年に小田急線が開業し、狛江、和泉多摩川駅が開業。戦後は市街化が進み、高度経済成長期に都心へのアクセスの良さから住宅地として発展しました。1960年代には、調布市と隣接する場所に両市を跨いで大規模団地である多摩川住宅が建設されるなど、東京のベッドタウンとして成長。1970年には市制が施行され、狛江町が「狛江市」となりました。2024年4月1日時点の狛江市の人口は、8万1,940人。世帯数は、4万3,066世帯となっています。

和泉多摩川駅近くの多摩川河川敷(筆者撮影)

狛江市は東京都内で最も小さく、埼玉県蕨市に次ぐ全国で2番目の小ささ。市内のほとんどの地域が市街化区域に指定されており、人口密度も多摩地域の中で2番目に高くなっています。東は世田谷区、西北は調布市に隣接し、多摩川を挟んで川崎市に隣接しています。

【狛江市のデータ】
総面積…6.39平方キロメートル
人口…8万1,940人
世帯数…4万3,066世帯
※2024年4月1日時点(狛江市ホームページ)

狛江市に住みたいが9割 「交通が便利」、「緑が多い」、「アットホームな感じ」

多摩川の河川敷(筆者撮影)

「令和5年度狛江市前期基本計画の指標等に係る市民アンケート調査報告書」によれば、「これからも狛江市に住み続けたい」と考える人が「当分は住むつもり」47.6%、「ずっと住みたい」42.4%となっており「住みたい」と回答している人が9割にも上ります。また、狛江市に対し「愛着や誇りを持っている」と答えた人(どちらかといえばを含む)が76.6%に上っています。

狛江駅前の商店(筆者撮影)

その理由として挙げられているのが、「交通機関が便利」「緑が多い」「アットホームな感じ」「コンパクトで住みやすい」「閑静な街」など。都会すぎず、田舎すぎず、街がコンパクトで治安が良くて暮らしやすいことが評価されているようです。

狛江駅周辺の住宅街(筆者撮影)

狛江市の街を歩くと、この街の暮らしやすさが実感できます。多摩川と野川の間にある市街地は、ほぼ平坦な地勢で自転車での移動がしやすいと感じます。公園面積は広いわけではないですが、桜並木が美しい六郷さくら通りや野川緑地公園などの自然が街なかにあり、とても長閑な印象です。

狛江市の鉄道およびバスの運行状況(出典:狛江市 都市計画マスタープラン)

狛江市の交通は、新宿方面と結ばれる小田急線がメインになります。狛江駅、和泉多摩川駅があるほか、世田谷区との境にある喜多見駅が利用できます。ともに小田急線の各駅停車駅で新宿駅まで約30分。成城学園前で急行に乗り換えれば、新宿駅まで20分台でアクセスできる近さです。

新宿駅(画像素材:PIXTA)

小田急小田原線は「和泉多摩川」駅〜「東北沢」駅間の線路複々線化の工事が2019年3月に完了し輸送力が強化され、混雑緩和とアクセス性が大きく高まりました。下北沢駅で渋谷方面へ、代々木上原駅で赤坂・大手町方面へもアクセス可能。通勤利便性の高い街といえるでしょう。

多摩川や野川など狛江市の豊かな自然 映画のロケ地としても活用

多摩川沿いの桜並木(画像素材:PIXTA)

総面積6.39平方キロメートルというコンパクトな狛江市は、ほぼ全域が市街化区域に指定されており市域全体に住宅が広がっています。そのため、多摩川河川敷など市内にある自然を身近に感じられます。居心地の良い落ち着いた風景が狛江市の各所にあり、多摩川河川敷や前原公園、野川などの憩いのスポットは、ドラマや映画のロケ地としても活用されています。

野川(画像素材:PIXTA)

狛江市は世田谷区のように大規模な公園はありませんが、狛江弁財天池・特別緑地保全地区のように街なかに自然が点在します。また、戸建ての住宅街が広がっていて生け垣や庭木などが街に潤いをあたえています。狛江市役所の前にあるヒマラヤスギは旧庁舎の建設時に植えられたもので、街のシンボルの一つになっています。

狛江弁財天池・特別緑地保全地区(筆者撮影)

子どもたちの遊び場となる公園も市内に点在します。野川緑地公園は、旧野川の川筋を整備した緑の散策路で多様な植物が目を楽しませてくれます。前原公園には、広々した芝生の広場のほか、トンボの成長が観察できる「とんぼ池」があります。

こまえプレーパーク(筆者撮影)

西河原公園内には池や噴水があるほか、子どもたちが遊べるこまえプレーパークも利用できます。開所日には専門スタッフがいて、狛江市の委託を受けたNPO法人こどもの遊びと育ちをささえる会・狛江が運営しています。ここでは自然を活かした遊び場があり、ものづくりも体験できます。狛江市は、子どもたちの健やかな成長を育める場が豊富にある街といえるでしょう。

西河原公園内の風景(筆者撮影)

狛江市の買い物環境については、駅前にOdakyu OX 狛江店などのスーパーが立地する他、市内には15の商店街があり、地域の日常生活を支えています。気軽に買い物できるお店が市内に点在しているのは、狛江市で暮らす魅力でしょう。

Odakyu OX 狛江店やエコルマホールの入る複合施設(筆者撮影)

また、東京慈恵会医科大学附属第三病院が狛江市和泉本町に立地しています。2020年国勢調査によれば、狛江市の昼間人口比率は東京都で最も低い74.3%となっています。オフィスや大学などが少ないためで、静かで落ち着いた住環境といえるでしょう。

次に、狛江市の住宅事情について紹介します。

マンション適地が少なく戸建て住宅が中心

狛江市では第一種低層住居専用地域などの戸建て中心の住宅街が広がる一方で、工場跡地などに大規模マンションも分譲されてきました。マンション適地が少ないため新築マンションの分譲は限られ、中古マンションの流通が中心となります。

狛江市の住宅街(筆者撮影)

新築戸建ての分譲は活発で、100平方メートル超の敷地面積のある戸建てが6,000万円台から7,000万円台で分譲されています。世田谷区に隣接する交通アクセスの良い街で値ごろ感ある戸建てが購入できるのは、狛江市で住宅を探す魅力といえるでしょう。

次に狛江市のおすすめの街を紹介します。

世田谷区の境に位置する喜多見駅は、大規模中古マンションストックが豊富

喜多見駅(筆者撮影)

一つ目は喜多見駅です。喜多見駅は、世田谷区と狛江市の境に位置した小田急線の駅。駅前には、高架下の商業スペースである小田急マルシェやサミットなどのスーパーがあるなど買い物施設が充実しています。ニトリ狛江世田谷通り店などの商業施設も立地します。

喜多見駅前(筆者撮影)

野川沿いには、世田谷区立きたみふれあい広場があるなど、憩いのスポットも。喜多見駅も狛江市の特徴であるコンパクトで暮らしやすい街といえるでしょう。

喜多見駅の大規模マンション(筆者撮影)

喜多見駅の住宅事情ですが、狛江市の中では既存の大規模マンションが多い地域です。総戸数135戸の世田谷喜多見ザ・テラス、総戸数137戸のプレイスガーデン喜多見、総戸数130戸のプレイスコート喜多見、総戸数139戸のプレイスヴィラ喜多見など、大規模マンションが徒歩10分圏に立地します。3LDKタイプが7,000万円台から9,000万円台で販売されており、中古流通しているこうしたマンションを狙うのも良いでしょう。

喜多見駅のマンション群(筆者撮影)

新築戸建ては、敷地面積100平方メートル以上のものが6,000万円台から7,000万円台で手が届きます。駅からやや離れた立地や敷地面積を抑えた狭小戸建てなら5,000万円台で検討可能です。

狛江駅には、狛江市役所など公益施設が充実 

狛江駅(筆者撮影)

次に、狛江駅を見てみましょう。狛江駅の魅力は、狛江市役所やエコルマホールなどの公益施設をはじめとした生活関連施設がそろっていること。狛江市役所が立地する狛江通りがあり、京王線国領駅方面へのバスアクセスも良好です。まさに、狛江市の中心といえるでしょう。

狛江市役所(筆者撮影)

桜並木が美しい六郷さくら通りを経由して、狛江市立西河原公園や多摩川へもスムーズにアクセスできます。コンパクトな狛江の暮らしを実現できる街といえそうです。

狛江駅北口(筆者撮影)

狛江駅も新築分譲マンションの供給は限られており、中古マンションの流通が中心。総戸数524戸のグランドメゾン狛江をはじめ、中古マンションストックは豊富です。狛江セントラルハイツなど1980年代につくられた大規模マンションストックが多いのも特徴的です。

グランドメゾン狛江の外観(筆者撮影)

築年数や立地で流通価格はさまざま。築年数によっては、3LDKタイプが4,000万円台で検討できます。新築戸建ての分譲は活発で、狛江駅徒歩圏では3LDKタイプが7,000万円台から検討できます。立地重視なら中古マンションを狙うのも良いでしょう。

多摩川を毎日楽しめる和泉多摩川駅

和泉多摩川駅(筆者撮影)

最後に和泉多摩川駅です。和泉多摩川駅の魅力は、多摩川の河川敷が近くにあること。多摩川を挟んで川崎市と隣接し、隣駅の登戸では大規模な土地区画整理事業が進行中で街の整備が進んでいます。

パーク・ハイム狛江と多摩川(筆者撮影)

多摩川緑地公園グラウンドや多摩川自由ひろばがあり、スポーツやレジャーも楽しめます。駅近くには、和泉多摩川商店街があり、スーパーやドラッグストアなど多彩なお店が豊富。個性的なカフェなどもあり、日々の暮らしをサポートします。多摩川の河川敷を歩くと、ジョギングする人や愛犬と散歩する人の姿も。日常的に多摩川の美しい景色を楽しめるのは、和泉多摩川駅で暮らす魅力でしょう。

和泉多摩川商店街(筆者撮影)

和泉多摩川駅の住宅事情ですが、すぐ近くに多摩川があるためマンション分譲は限られます。多摩川一望の大規模マンションであるパーク・ハイム狛江は、1987年の竣工。築30年を超えるマンションも少なくありません。一方で、新築戸建て分譲は一定数あり、6,000万円台から7,000万円台中心に販売されています。和泉多摩川駅で住まいを探すのなら戸建て中心になるでしょう。

多摩川に寄り添う街。洪水リスクに留意

街がコンパクトで自然に恵まれた狛江市ですが、留意すべきなのは洪水リスクです。多摩川や野川などの河川に囲まれた立地だけに、ハザードマップをよく確認しましょう。

「多摩川住宅ニ棟団地マンション建替え事業」の位置図(出典:2023年8月7日 多摩川住宅ニ棟団地マンション建替組合リリース)

調布市と狛江市にまたがる多摩川住宅では、住宅団地の建替えが一部で行われています。2023年7月には、「多摩川住宅ニ棟団地マンション建替え事業」において狛江市の認可を受けマンション建替組合が設立されました。522 戸の住宅団地を、1,217 戸の大規模マンションに建替え、再生する予定です。狛江市では、一中通り沿道地区計画の策定など良好な都市環境の形成に向けて事業が各所で進められています。

また、小田急線は複々線化によって都心アクセスがよりスムーズに。狛江市と結ばれる新宿駅や渋谷駅では、大規模な再開発も進行中です。開発が進めば、狛江市の拠点性もさらに高まるでしょう。
良好な都心アクセスと居心地よい日常が実現できる狛江市の暮らし。家族の生活拠点として目を向けてみてはいかがでしょうか。