【栃木】日本のトライアスロンのトップ選手、ニナー賢治選手(30)=宇都宮市=のパリ五輪出場が5月末にも正式に決まる。初出場だった前回の東京五輪は14位。7月のパリ五輪は2大会連続の出場を果たした上でのメダル獲得を目指している。

 ニナー選手は、世界の強豪が集まった11日開催の「世界シリーズ横浜大会」(横浜市)で日本人最高の7位となった。レース途中では一時3位に浮上した。五輪選考レースの一つでもあり、この結果で、パリ五輪出場決定にさらに近づいた。

 主な選考基準となる五輪出場資格ランキング(OQR)で、現在は日本人最上位の15位につけている。パリ五輪出場が30日にも正式発表される予定だ。その後、フランス国内へと移動をし、五輪本番まで最終調整をする。

 トライアスロンは2000年のシドニー五輪から競技採用されたが、日本人選手のメダル獲得は男女ともにない。関係者はニナー選手の活躍に期待をかけている。

 パリ五輪のトライアスロン男子個人は7月30日、水泳(1・5キロ)、自転車ロードレース(40キロ)、長距離走(10キロ)の3種目を連続して行い競う。

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 ニナー賢治選手の2大会連続の五輪出場決定を控え、二人三脚で歩んできた村上晃史(こうじ)コーチ(56)=茂木町=に、五輪本番に向けた課題を聞いた。小学生から80歳代の愛好家が集う「宇都宮トライアスロンスクール」(2002年設立)を運営し、競技の普及にも取り組んでいる人だ。

 ――ニナー選手は、11日の「世界シリーズ横浜大会」のランで一時3位に浮上した。第2集団の先頭を走ったが、終盤に後退し7位だった

 後ろの選手が力をためているのは見えていた。何人かに追い抜かれるだろうと思っていたはずだ。目標は(五輪選考基準の一つである)横浜大会の8位以内だった。そこは死守したかった。東京五輪金メダルだったノルウェーのブルンメンフェルト(10位)ら後続を引き離すことを優先し、集団をあえて引っ張った。

 ――課題はランだと言ってきた

 改善できている。メダルを狙えるレベルの走りだ。横浜大会前は、パリ五輪マラソン代表の赤崎暁選手と練習した。

 以前は上半身と下半身の動きが連動せず、バラバラだった。腰の角度に問題があった。また、股関節の可動領域がせまく、動かし方が悪いと歩幅が広がらない。東京五輪後、股関節の動きを改善するドリルをしてきた。

 ――メダルを狙う上で外国勢との差は

 カギはレース中のペース変更だと思っている。

 横浜大会で、上位の外国勢はランの最後にペースを上げた。一気にペース変更できる筋力、スピード練習が若干足りなかった。その練習を追加で入れたい。最後のメダル争いは数秒の差になると思う。最後にスピードを上げられるかどうかでメダルが決まるだろう。

 ――五輪はどういうレース展開が望ましいか

 スイムはパリのセーヌ川を泳ぐ。流れが速いところ、遅いところがある。そこを見極めてコース取りをすることが大事だ。バイクはヨーロッパ特有の石畳の上を走る。

 理想的なのは、スイムの後のバイクで、10人前後の逃げる集団をつくり、その中で走ること。後ろの集団を30秒以上離せれば、ランで追い抜かれることはない。メダル獲得の可能性が高まる。

 最後は数珠つながりで選手がゴールし、例えば、10秒の中に10人がひしめくような展開かもしれない。選手間のかけひきも生じる厳しい戦いだ。

 ――ニナー選手の五輪までの予定は

 30日まで宇都宮に滞在する。少しリラックスし疲労を抜きたい。その後、ノルウェーに入り1週間〜10日間程度いて、フランスに移動し、五輪直前まで高地で練習する。練習量を落とさず、けがにも注意したい。

 ――日本のトライアスロン界の今後の課題を

 才能ある選手を呼び込みたい。これまでは指導者が直談判し、選手を連れてきていた。たまたま才能を見いだしてきた。組織的なシステムではなく、それでは(世界を相手に)勝ち目がない。

 パリ五輪後は、トライアスロンにどう才能ある選手を呼び込むかにさらに取り組んでいきたい。(山下龍一)