パレスチナ自治区ガザの当局は、イスラエル軍が撤退したガザ南部ハンユニスの病院で集団墓地が見つかったと発表した。ロイター通信などによると、23日までに発見された遺体は計310人に上るという。イスラム諸国はイスラエル軍の戦争犯罪の疑いがあると非難。国連も調査の必要性を訴えている。

 イスラム組織ハマスが実効支配するガザの当局の発表によると、集団墓地が発見されたのは南部最大の病院「ナセル病院」。多くの患者や避難者が身を寄せるなか、イスラエル軍が2月中旬に突入した。病院内にハマスの戦闘員が潜んでいるとし、ハマスにとらえられた人質やその遺体があると主張していた。

 イスラエル軍が今月上旬にハンユニスから撤退したことを受け、当局がこの数日間、捜索したところ、地中深くに埋められ、廃棄物がかぶせられた遺体が見つかった。女性や高齢者、負傷者の遺体もあったという。

 ロイターによると、当局は病院にはこの集団墓地とは別に少なくともあと二つの墓地があるとしており、遺体の数は数百人単位で増える可能性がある。当局は「イスラエル軍が意図的に隠したもので、手を拘束され、衣服をはぎ取られた遺体もあった。冷血に処刑された」と主張している。

 一方、米CNNが住民の証言などに基づいて報じたところによると、発見された遺体の多くは、周辺で激しい戦闘があった1月、親族や医療従事者らによって一時的な措置として病院に埋められた。その後、イスラエル軍が遺体を掘り起こして人質がいないか確認し、再度埋めなおしたとみられるという。

 イスラエル軍の広報担当者は朝日新聞の取材に「人質がいないか確認するために遺体を慎重に調査し、元の場所に戻した。イスラエル軍が(意図的に)遺体を埋めたとする主張は根拠がない」と回答した。