大手建材メーカー「ニチアス」(東京都)の羽島工場(岐阜県羽島市)の周辺で働いていた男性が死亡したのは、工場から飛散したアスベスト(石綿)が原因だとして、男性の遺族2人が15日、公害紛争処理法に基づき、3300万円の損害賠償を求める責任裁定を国の公害等調整委員会に申請した。

 申請書などによると、男性は1966〜79年ごろ、工場近くで織物関連などの仕事をしていた。2018年にアスベストの吸入による中皮腫と認定され、20年に亡くなった。

 遺族は、工場から飛散したアスベストが原因として、近隣住民を対象としたニチアスの救済制度の適用を申請。男性は工場近隣で働いていたが、同社は居住の事実はないとして救済金を支給しなかった。

 代理人弁護士によると、アスベストの問題で公調委に責任裁定を申請するのは全国初のケースという。同社は「書類を受領していないため、コメントは差し控える」としている。(高原敦)