奈良時代、遣唐使と共に海を渡った僧・玄昉(げんぼう)が初代住職を務めた奈良市の海龍王寺で18日、海と航海の安全を祈る四海(しかい)安穏(あんのん)祈願法要があり、元日に発生した能登半島地震と津波の被災地復興などを祈願した。

 玄昉は734年、唐から帰国する船で暴風雨に遭ったが、「海龍王経」を一心に唱えて何とか帰国したことから、聖武天皇が玄昉の寺を海龍王寺と名付けたとされる。

 奈良時代の航海安全祈願の儀式を2004年に復活させた。東日本大震災で被災した福島県相馬市や、太平洋戦争の激戦地となった沖縄県読谷村など国内9カ所から届いた海水がガラスの器に入れられ、祭壇に並べられた。石川重元住職ら僧侶3人と、天平時代の衣装を着た女性らが器を囲み、約1時間にわたって法要を営んだ。

 石川住職は「平城京の時代にも天災や戦乱、疫病があり、人々は神仏に祈ることで難局を乗り越えてきた。その祈りの精神性を伝えていきたい」と話した。(今井邦彦)