【静岡】住宅が地震で全半壊した場合、襲いかかってくる柱や梁(はり)、家具などから一時的に身を守ってくれる「耐震シェルター」や「防災ベッド」が注目されている。自治体は助成制度を用意して住宅の耐震補強を呼びかけているが、補強工事費の一部に自己負担が生じることなどを理由に工事の着手に慎重な人も多く、住宅耐震化の次善の策としても推奨されている。

 能登半島地震を受け、島田市は7月末まで、市役所1階ロビーに耐震シェルターと防災ベッドを展示している。展示物を実際に見てもらうことで、防災の一助として検討してもらう狙いだ。

 展示されている耐震シェルターは一部が鉄骨の木造で、出入りできる間口は約2・5メートル、奥行きは約2・4メートル、高さは約2・3メートル。外枠の広さは約4畳半分、内側の広さは約3畳分で、大人2人が寝室として利用することを想定している。

 販売している大手住宅メーカーの一条工務店によると、木造2階建ての1階の室内に設置できるシェルターの価格は45万1千円と高額だが、能登半島地震以降の防災意識の高まりを受け、問い合わせや注文が相次いでいるという。

 一方、防災ベッドは、幅1・14メートル、長さ2・1メートル、高さ1・85メートルの大きさで、鋼鉄製のアーチ型フレームが木製ベッドを覆っている。地震などで住宅が全半壊した場合、フレームで一定の空間が確保できる。県などが開発した防災ベッドは現在、日鉄建材グループ「ニッケン鋼業」が販売している。

 市によると、市内の住宅耐震化率は90・7%(2023年3月時点)に達していると推定されるが、残りは耐震不足のままという計算になる。「耐震化率100%」は難しいのが実情だ。

 そこで市はこれまでと同様、耐震化の重要性を説くだけでなく、1981年5月末以前に建築された木造平屋や2階建て住宅のうち、耐震診断の評定が基準未満の場合など一定の条件を満たす場合に、耐震シェルターか防災ベッドの購入費補助を増額することで一人でも多くの人命を守ることにした。耐震シェルターの場合、補助の上限は25万円が45万円に、防災ベッドは25万円が44万円にそれぞれ引き上げた。

 市危機管理課の担当者は「住宅の耐震化を進めてもらうことが大事だが、費用面などで厳しい場合、耐震シェルターや防災ベッドだけでも進めてほしい」と話している。(林国広)