唐古・鍵考古学ミュージアム(奈良県田原本町)の企画展「宮古平塚古墳にみる王権」が開かれている。全国で初めて完全な形で出土した太鼓形埴輪(はにわ)をはじめとする同古墳(同町)の多彩な埴輪を中心に展示。「太古」の社会を想像できる。

 宮古平塚古墳は古墳時代後期(6世紀前半)に築造されたとされる。石見型、馬、蓋(きぬがさ)(高い位の人物に差し掛けた日傘)……。2021、22年の発掘調査で出土した多くの形象埴輪の中でも、太鼓形埴輪の存在感は群を抜く。

 長さ約28センチ、胴部の直径約25センチ、鼓面約17・5センチ。現代の太鼓も想像できる完全な形状だ。円い孔(あな)は、埴輪の形をつくりあげたり、焼いたりするためにあけられたものとみられる。

 太鼓形埴輪の出土例は少ない。これまでに「真の継体天皇陵」とされる大きな今城塚古墳(大阪府高槻市)や、地方有力者層の前方後円墳から出土したという。

 一方、宮古平塚古墳は1辺約20メートルの方墳だ。ミュージアムの柴田将幹学芸員は、この小規模な古墳で太鼓形埴輪が見つかったことに注目。「軍事や儀礼で太鼓をたたいた人か、太鼓を作った人か……」。葬られた人は、当時の倭王権とつながる特殊な職能を持つ人物だった可能性も考えられるという。

 内側をのぞける同古墳の馬形埴輪や、全長200メートルの大型前方後円墳島の山古墳(川西町)の円筒埴輪など、見どころの多い出土品がそろう。26日まで。月曜休館。一般300円など。

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 田原本町は、「バーチャル現地説明会@宮古平塚古墳」を動画投稿サイト「ユーチューブ」で配信している。古墳や出土品のことをわかりやすく学べる。(清水謙司)