ロシアの侵攻を受けるウクライナの住民支援について考えるシンポジウムが4月28日、島根県出雲市で開かれた。現地で2年間、支援活動をしている中條(ちゅうじょう)秀人さん(43)=徳島県出身=と、首都キーウの様子を撮影し映画を制作した泉原(いずはら)航一さん(36)=東京都在住=の話に、市民らが耳を傾けた。

 ウクライナ避難民を支援するウェブサイト「ドポモーガ」(ウクライナ語で「助け」)を運営するITコンサルティング会社「SAMI(サーミ) Japan」(東京)の主催。同社には侵攻に反対し、出雲市に移住してきたロシア人社員がいる。

 中條さんはウクライナのドニプロに住み、地元の人とともに戦禍で苦しむ住民を支援している。シンポでは、ダムが決壊して洪水被害に見舞われた人たちに水や浄水器を届ける活動をしたことを説明。息子と孫をミサイル攻撃で失い、嘆き悲しむ高齢女性に出会った時の様子も明かした。「恨みや憎しみ、怒り。負の連鎖が止まらない」

 中條さんは、自身は幼少期に虐待を受けたがそこからはい上がれたことを振り返り、「負の感情はすごいエネルギー。自分の成長に少しでも使ったら、大切な人を守れるようになると伝えている」と述べた。

 今後の支援について、「どこのスーパーにも物はあるが、買うお金がない。仕事がなくなる人もいる」として、食料支援よりも物を買えるようにしてあげる支援が大切だと説明した。

 泉原さんは映画監督。昨春、キーウに1週間滞在。出会った人に話を聞き、訪れた学校、ミサイルの落下現場などを撮影し、映画「戦時下のひまわり」(約90分)を編集した。

 シンポでは、「メディアで情報があふれ、何が本当なのか、自分の目で見るしかないと思った」とウクライナに行った理由を説明。「(行ってみると)普通だった。みんな仕事をしていて、戦争の中にも日常があると思った」と振り返った。

 現地の人から「心の支援」を求められたといい、「アートが支援につながるのではないか」と話した。(石川和彦)