春は花の季節だ。

 ソメイヨシノの満開後に、桃の花が一面に咲き開いたと思っていたら、今度はサクランボやリンゴや梨の花が続く。

 福島市飯坂町湯野の横江義洋さん(76)の果樹園では、白いボンボンのような花で覆われたサクランボの木の下に15日、ミツバチが入った巣箱がひと箱、置かれた。

 午前5時、横江さんが巣箱を開けると、蜂がいっせいに飛び出し、花に向かった。サクランボも、リンゴと同様に多くの品種は「自家不和合性」。実をならせるには、ほかの品種の花と交配しなければならない。

 サクランボの王様、「佐藤錦」の木の横には、開花時期が一緒の別のサクランボ品種の枝が置かれていた。「受粉樹」と呼ぶ。蜂が、花の蜜や花粉を集めて飛び回ることで、受粉樹の花粉が佐藤錦につけられる。

 「いいやつを作らなければならないから、どの農家も本気を出してやっている」と横江さん。

 横には、桃畑が広がる。

 「摘蕾(てきらい)」で数が減った蕾(つぼみ)から咲いた花を、さらに間引く「摘花(てきか)」の作業も終わっていた。余計な花は、徹底して咲かせない。

 どれも満開の木々だったが、落ちた花で今度は地面がピンクのじゅうたんのようになった。数日後、葉が茂ってきたと思っていたら、いまはもう、枯れた花の中に、1センチほどの緑の実が見える。

 果実の成長は早い。(岡本進)