2024年F1第2戦サウジアラビアGP。超高速の市街地サーキットで行われるサウジアラビアGPの決勝レースは、ランス・ストロールのクラッシュがきっかけで導入されたセーフティカーにより、複数のチームの戦略が分かれることに。そしてこの状況をうまく利用したハースが、今シーズン初ポイントを獲得した。サウジアラビアGPを無線とともに振り返る。

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 レーススタート前、ピットロードを進んでいたマクラーレンのランド・ノリスの鼻先に、RBの角田裕毅が突っ込んできた。

ノリス:クラッシュ寸前だったよ! あれはペナルティだろう。フロントウイングは大丈夫だと思うけど、他にダメージがあるかも。

 結局マシンにダメージはなく、角田にはレース後に5秒ペナルティを科された。

 一方、かつての角田のチームメイト、ピエール・ガスリー(アルピーヌ)は開幕戦18位、サウジアラビアGPも予選18番手と、苦しい戦いが続く。それでもスタッフに檄を飛ばした。

ガスリー:さあ、やってやろうぜ、みんな。レースは何が起きるかわからないしね。必ずチャンスを掴もう。
カレル・ルース:荒れたレースになるだろうしね。

 しかしグリッドに着く前の周回で、ギヤボックストラブルに見舞われる。

ガスリー:ギヤボックスに問題だ。

1周目
ルース:リタイアだ。ピットに入ってこい。6速ギヤは使わないように。
ガスリー:修理して、数周でも走れる可能性はないのか?
ルース:データを見ているが、難しそうだ。クルマから異臭がしているしね。マシン後部にだいぶダメージがあるようだ。

 なんとかスタートしたものの、すぐにピットインの指示が。ガスリーのレースは1周で終わった。

 7周目、ランス・ストロール(アストンマーティン)がクラッシュを喫した。

ストロール:壁に当たった。
ベン・ミッチェル:戻ってこれるか。
ストロール:壁のクソ野郎にクラッシュしてるんだぜ。
ミッチェル:そうだね。

 黄旗からセーフティカー導入となり、大部分のクルマがピットイン。ランド・ノリス(マクラーレン)、ルイス・ハミルトン(メルセデス)、ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)、周冠宇(キック・ザウバー)がステイアウトした。

 その混乱のなか、セルジオ・ペレス(レッドブル)がフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)の目の前でピットアウトしていった。

アロンソ:レッドブルにクラッシュ寸前だ。本当にギリギリだった。

 ペレスはこれで、5秒ペナルティを食らった。

 10周目のレース再開直後、ケビン・マグヌッセン(ハース)がサイド・バイ・サイドからアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)を壁際まで寄せ、接触しながら強引に抜いていった。

アルボン:あいつ、何やってるんだ。スペースをくれなかった。スチュワードに言ってくれ。
ジェームズ・アーウィン:了解した。

 これでマグヌッセンは、最初の10秒ペナルティを下された。

 レース中盤、ハースはヒュルケンベルグが9番手、マグヌッセンは13番手という位置だった。

18周目
マーク・スレード:ケビン、(1分)35秒5のペースを維持しろという指令だ。周に追いつくな。35秒5だぞ。
マグヌッセン:OK
スレード:10秒ペナルティをもらったから、実質18位だからね。後ろの連中を抑え続けるんだ。

 もはやポイント獲得の見込みのないマグヌッセンに後続を抑えさせ、その間にヒュルケンベルグが逃げ切る作戦だった。その後マグヌッセンは角田を抜いて12番手に上がる。

17周目
角田:コースオフして抜いて行った!

 これでマグヌッセンは、さらに10秒ペナルティを科された。

22周目
スレード:さっきの指示を、このまま遂行し続けろ。
マグヌッセン:了解した。
スレード:ニコはまだ、きみの5秒前だ。20秒まで広げる必要がある。

 29周目、角田が最終コーナー立ち上がりでマグヌッセンをいったん抜き返すが、ターン1-2のコース外に押し出されてしまう。

角田:なんて危険な運転だ。

スレード(→マグヌッセン):素晴らしい運転だ。そのまま続けろ

 33周目、20秒以上のマージンを築いたヒュルケンベルグは、無事にマグヌッセンが蓋をする後続勢の前でのコース復帰に成功した。

スレード:ニコは2秒前でコース復帰した。素晴らしいチームワークだ。

 一方、11番手スタートのオリバー・ベアマン(フェラーリ)は、ノーミスの走りで8番手まで順位を上げていた。

リカルド・アダミ(→ベアマン):とんでもなくいい仕事をしてるぞ。

 最年少18歳のベアマンだけでなく、最年長42歳のアロンソも元気いっぱいだ。

37周目
アロンソ:ターン7で、壁にちょっとキスしてしまった。でも問題ない。

 38周目、5番手につけたアロンソは、さらにギヤを上げた。

アロンソ:チェッカーまでカウントダウンしてくれ。ここから予選モードで行くから。

 7番手まで順位を上げたベアマンは、ソフトタイヤで猛追してくるノリス、ハミルトンの存在が気になってしょうがない。

43周目
ベアマン:このペースだとノリスに捕まる?
アダミ:うん。4周後かな。

 いったんはそう答えたアダミだったが、これでは新人にかわいそうと思ったのか、励ましモードに変更した。

アダミ:ノリスはタイヤに苦しんでる。行けるぞ。
ベアマン:ハミルトンはどれくらい?
アダミ:大丈夫。2台の前でフィニッシュできる。集中しろ。

 そしてチェッカー。フェルスタッペンが開幕2連勝。去年9月の日本GPから9連勝だ。

ジャンピエロ・ランビアーゼ:実にコントロールされたレースだった。
フェルスタッペン:また素晴らしい週末を過ごせた。みんな、よくやってくれた。

アダミ:P7。最高の仕事だったぞ。
ベアマン:悪くなかったみたいだね。本当にオーバーテイクが難しかったけど、クルマはいうことなかった。みんなありがとう。存分に楽しんだよ。
アダミ:ドライバー・オブ・ザ・デイも、きみが選ばれた。
ベアマン:おお〜嬉しいね!

 そしてチームメイトのポイント獲得に貢献したマグヌッセンを、担当エンジニアのスレードが労った。

スレード:ケビン、きみの望むようなレースじゃなかったと思うが、素晴らしい走りをしてくれた。おかげでチームは1ポイントを獲得できた。きみの努力には感謝しきれないよ。
マグヌッセン:僕の方こそ、申し訳ない。次はもっとクリーンな走りをするよ。