元F3ドライバーで現在は車椅子ファションブランド『ピロレーシング』の代表などを務める長屋宏和が、自身を主人公とした絵本『ジーンズをはきたい!』を出版するため、クラウドファンディングで支援を募っている。

 14歳からレースキャリアをスタートさせ、全日本カート選手権やフォーミュラ・ドリームなどを経て2002年に全日本F3選手権にステップアップした長屋は、その年のF1日本GPのサポートレースで大クラッシュを喫し頚椎損傷の大怪我を負う。この事故以降、車椅子生活を余儀なくされることとなった長屋だが、「レースに復帰したい」その一心で治療や懸命なリハビリを続け、退院後の2004年12月に「絶対に無理」と言われていたレースへの復帰を果たしてみせる。

 一方で事故後、手足が自由に動かせなくなったことで以前は当たり前のようにできていた運転操作ができなくなったことを痛感した長屋は、レース以外のことにも次々とチャレンジしていく。2005年、彼は「車椅子生活でも、カッコいいジーンズが履きたい!」との想いから車椅子ファッションブランド『ピロレーシング』を立ち上げた。2009年は鈴鹿サーキットで、翌2010年には銀座三越のバリアフリーを監修する。

 また2018年と19年は車椅子での富士登山にも挑戦。2017年から22年にかけて若手育成チームの監督としてレース参戦し、2022年シーズンにTOYOTA GAZOO Racing GR86/BRZカップ・クラブマンシリーズにおいて勝木崇文をシリーズチャンピオンに導いた。さらに、同年は手動運転装置を用いてeモータースポーツのSuzuka eSports Callenge Race(SeCR)への参戦を果たし、その翌年にはレノボ・ジャパンeモータースポーツアンバサダーに就任し2023年F1日本GPのプロモーションに参加している。

 今回、長屋が出版を目指す絵本『ジーンズをはきたい!』は、そんな彼がレース中の事故により車椅子生活になってから再起し、さまざまな新しい挑戦を続けていくストーリーを描いたものだ。作画は全国各地で“読み笑わせイベント”を開催する絵本作家の保科琢音さんが担当する。

「今の大変な時代だからこそ、子供はもちろん、大人にもこの絵本をぜひ読んでいただきたい」と願う長屋は、この絵本を手に取る子供たちに、「夢を持つことの大切さ」や「目標に向かって成長していくことの素晴らしさ」を伝えたいと考えている。

「子供は、だれでも無限の力を秘めていています。その可能性を引き出すひとつのきっかけにこの絵本がなってくれたら嬉しいです」

 すでに制作が開始されている絵本『ジーンズをはきたい!』は、早ければ来年3月にもプロジェクト支援者へのリターン品の出荷が開始され、同じく3月に出版記念イベントやSDGsワークショップが開催される予定だ。絵本の目標印刷部数は600。リターン分を除いた多くは募集を募ったのち、全国の小学校や学童、養護学校、図書館、子供病院などに届けられるという。長屋と保科さんが挑む絵本制作プロジェクトの概要やリターン内容など、詳しくはクラウドファンディングサイト『READYFOR』内の当該プロジェクトページ(https://readyfor.jp/projects/nagayaehon)を確認してほしい。