第108回インディアナポリス500マイルレース、迎えた予選2日目は1日目よりも暑くなり、予選のコンディションとしてはさらに厳しいものになった。

 予選初日で琢磨は、2回目のアテンプト(アタック)でタイムを上げてトップから9番手となる、アベレージスピード232.473mphをマークした。

 チーム・ペンスキーを筆頭とするシボレー勢が優勢のなか、2日目のトップ12に残ったホンダ勢はカイル・カークウッド(アンドレッティ・グローバル)が5番手、フェリックス・ローゼンクヴィスト(メイヤー・シャンク・レーシング)が7番手、佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)が9番手という3台のみだった。

 予選2日目の朝に設けられた1時間のプラクティスでは、琢磨は1度だけ予選を想定した4周のアテンプトをし、232.715mphで12台中8番手のスピードをマーク。このままであればファスト6に進めるかどうかは微妙なところで、ペンスキーのジョゼフ・ニューガーデンは234mph台にまで入っている。

 琢磨は「朝の走行をしてから、エンジニアが気温や路面温度を見て、ダウンフォースを想定してマシンのセッティングを決めるんですが、僕はそこから2ステップくらいダウンフォースを減らしてもらうようにリクエストしました」という琢磨。

 トップ12予選でシボレー勢優位のなか、上位に進むには少しリスキーなセッティングもやむを得ないのかもしれない。しかし、予選初日のアテンプトを思えば琢磨はそのリスキーな所をくぐり抜けて来そうな気さえする。

 予選1日目で9番手となっていた琢磨は、2日目のアテンプト順が4番目となる。

 クルーチーフのゴーサインに合わせてコースインし、1周のウォームアップ後にアタックに入る。肝心の1周目は232.182mphと233mph台に届かず。2周目はむしろスピードアップし232.226mph、3周目も揃えたように232.213mphとペースを落とさず、4周目も232.065mpにキープして、まとめあげた4周の平均は232.171mphとなった。

 4番目のアタックで、リナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング)、パト・オワード(アロウ・マクラーレン)に続く3番手につけた琢磨。

 その後も上位陣のアテンプトが続くが、琢磨のタイムを上回れなかったのは、カイル・カークウッド(アンドレッティ・グローバル)のみで、上位陣はシボレー勢が席巻した。とくにペンスキーのニューガーデン、ウィル・パワー、スコット・マクラフランの速さが際立っていた。

 琢磨は12台中10番手のタイムとなって、4列目イン側のスターティンググリッドが確定した。

「ちょっとコンサバティブに行き過ぎてしまいましたね。僕は2ステップくらいダウンフォースを減らしてもらいましたけど、もっと減らしても良かった。232mph台でキレイにタイムが揃ったのはそのせいです」

「1周目に走り始めた時には、ん?ちょっとこれはスピードが足りないかなと感じましたけど、残念でしたね。もうちょっと攻めて、ホンダ勢で9番手だったフェリックス・ローゼンクヴィストにはチャレンジしたかった。昨日うまく走れていて勢いがあっただけに悔しいですね」という琢磨。

 だが少し考えてみると、今年は名門チップ・ガナッシ・レーシングが1台も予選2日目に残れない異常事態であり、昨年はペンスキーも残れていなかった。

 そのなかで、2022年はデイル・コイン・レーシングで10番手、2023年はチップ・ガナッシ・レーシングで8番手、今年はレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングで10番手と、チームが変わりながらもインディ500予選で3年連続トップ10に入るスピードと安定した成績を残しているのだ。

 こんなドライバーが他にいるだろうか。ましてやレギュラーでもなくスポット参戦で急造の4台目の体制なのだ。どれほどのハンディがあるだろうか。その意味では代表のボビー・レイホールが琢磨をチームに呼び戻したのは正解だっただろう。

 だが肝心のレギュラー3台が不振に終わったのが残念でならない。エースのグラハム・レイホールは昨年に続いて、予選落ちを決めるラストチャンスのクオリファイに出なくてはならなかったのだ。

 結果として、若いノーラン・シーゲルがウォールにヒットしたために、予選落ちの憂き目はまぬがれたが、琢磨の速さをグラハムはどんな気持ちで見ていたのだろうか。あらゆるデータは共有されていただけに複雑な思いだろう。

「インディ500はここまでがひとつのレースで、またレースに向けて仕切り直しになります」と言う琢磨。

 月曜日のプラクティスと金曜日のカーブデイで残されたそれぞれの2時間で、決勝のセッティングをどこまで煮詰めることができるだろうか。琢磨の職人ぶりをまた見ることになりそうだ。