母校の威信をかけた一投一打



東京六大学リーグ戦は4月13日開幕する。熱戦を2日後に控えた11日、東京六大学野球連盟は懇親会を開催し、6校の選手がシーズンに向けた決意を語った。左から慶大・外丸、明大・飯森、早大・吉納、法大・篠木、立大・沖、東大・平田[写真=BBM]

 東京六大学春季リーグ戦は4月13日、神宮球場で開幕する。第8週の早慶戦まで、天皇杯をかけた熱戦が展開される。シーズン開幕を2日後に控えた4月11日、東京都内で懇親会が開催。加盟6校の主将のほか、中心選手が出席し、春のシーズンへ向けた決意を述べた。ここでは、神宮の杜での飛躍が期待される主力選手6人の抱負を紹介する。

 昨秋、シーズン6勝(0敗)を挙げて、4季ぶりのリーグ優勝の原動力となった慶大の右腕・外丸東眞(3年・前橋育英高)は「リーグ優勝と最優秀防御率のタイトルを獲得したい」と語った。13日の開幕カードでは東大と対戦。今春からチームを指揮する東大・大久保裕監督は、細部まで分析するアナライザーを総動員させ「外丸対策」に余念がない。

 明大は韋駄天・飯森太慈(4年・佼成学園高)が打線の火付け役となる。50メートル走5秒8。昨春のリーグ戦、全日本大学選手権でも首位打者と、今春も安打量産への期待が高まる。「(主将の)宗山(宗山塁、4年・広陵高)、ばかりが注目されている。それ以外の選手もすごいんだぞ!! というところを見せたいです」。神宮へ移動するバスの中では、全員で大声で歌を歌って球場入りするのが儀式。「気合を入れて、神宮に乗り込みたい」と目をギラギラとさせた。

 2020年秋以来のV奪還を誓う早大は小宮山悟監督が「(主将の)印出(太一、4年・中京大中京高)、(副将の)吉納(吉納翼、4年・東邦高)が打てないと始まらない」と、下級生時代から実績十分の2人を、打のキーマンに挙げる。吉納はリーグ史上初となる春、秋連続での三冠王(打率、本塁打、打点)を目指しており「入学以来、優勝経験がありません。自分たちもそうですが、後輩たちに優勝の景色を見させたい」と力強く語った。

 157キロ右腕の法大・篠木健太郎(4年・木更津総合高)は、チームを優勝へ導いた上でドラフトにおける「1位競合」を目指している。「自分のピッチングで、チームをリーグ制覇へと導きたい」。今春から指揮を執る大島公一監督は「篠木と(左腕の)吉鶴(吉鶴翔瑛、4年・木更津総合高)が頑張らないと、チームは成り立ちません」と、高校時代から7年目となるダブルエースの奮起を促している。目指すは最上級生2人で5勝ずつを挙げ、10戦全勝優勝である。

 2017年春以来のリーグ優勝を狙う立大は4年生右腕・沖政宗(磐城高)が昨秋までに33試合登板と、法大・篠木と並び現役最多である。冷静なマウンドさばきと、投球術に磨きをかけている。最上級生としての自覚が芽生え「スローガンは『結束』。私生活から見直しをしてきました。日々の取り組みを、優勝につなげられるようにしていきたい」。チーム内では「生活改善委員」を務めており、模範的な部員である。学生らしく、キビキビした姿勢、応援される野球部を目指していく。

 1925年秋のリーグ創設以来、46年春の2位が最高成績である東大は「優勝」を掲げている。例年の「最下位脱出」「勝ち点2」といった現実的な設定ではなく、目線を上げていくことで、モチベーションをさらに高めてきた。1998年春から52季連続最下位だが、今春は不気味な存在と言える。2年秋のリーグ戦デビュー以来、17試合で未勝利のエース右腕・平田康二郎(4年・西高)は「昨年までの(左右の)ダブルエースが抜けましたので、自分が主戦として引っ張っていきたい」と、令和の赤門旋風を固く誓った。13日の開幕試合で東大と対戦する慶大・堀井哲也監督は「平田君を攻略することがすべてです」と警戒感を強めている。

 母校の威信をかけた、一投一打から目が馳せない。グラウンドだけでなく、伝統ある応援を繰り広げる応援席も、東京六大学の醍醐味である。連盟創設99年。神宮の杜は今春も、6校の学生たちを温かく見守る。

文=岡本朋祐