3年春に捕手としてレギュラー獲得



桜美林大の正捕手・寺嶋は日々、成長している

【5月19日】首都大学一部リーグ戦
東海大1-0桜美林大(1勝1敗)

 首都大学リーグ第7週2日目。前日の東海大1回戦での勝利で一部残留を決めた桜美林大。攻守の要としてプレーしているのが寺嶋勇馬(4年・千葉明徳高)である。

 桜美林大では1年秋にリーグ戦デビュー。3年春に捕手としてレギュラーを獲得し、リーグ戦で初本塁打も記録したが、シーズン前のオープン戦では出番なし。先発を予定されていた選手がケガをしたため、その代役としての出場で「ラストチャンスだと思い、気持ちだけだったんですが活躍できました」と見事にこの千載一遇の機会をつかんでみせた。

 しかし、昨秋はスタートこそ良かったものの、腰の故障もあって低調。そこで、この冬はこれまでバッティングに重きを置いていた練習を変えて、ウエイトトレーニングに励んだ。「キャッチャーをやっていて下半身は鍛えられているので、上半身や体幹を中心に鍛えました。体が大きくなったことで自信が付きましたし、飛距離は自然と伸びているのでコンタクトを重視しています」。バットも今季から変えた。「3年生の頃は長打狙いでトップバランスの重たいバットを使っていたのですが、今季は長打よりもチャンスでランナーを返すために、ミドルバランスの軽いバットを使っています」。

 今季から副主将となり「プレーで、背中で引っ張る選手になりたい」と抱負を語った。

 こうして迎えた春季リーグは開幕週の筑波大2回戦で3安打。その後もコンスタントにヒットを重ね、第6週まで打率.310の好成績。東海大1回戦でも4回裏にタイムリー。捕手らしく「1打席目にチェンジアップで打ち取られたので、チェンジアップで勝負してくると思い、待っていた球を振りぬきました」と配球を読み切ったうえでの一本だった。

 守備では井上雅也(1年・日大豊山高)と根岸大和(1年・藤嶺藤沢高)の2人の1年生をリード。「先発した井上は試合前からガチガチに緊張していたのですが『逃げて後悔するよりも、思い切って投げて打たれたほうがいい』と声を掛けました。二番手で登板した根岸は逆に緊張しないタイプなんですが、フォークが良いので、フォークで打ち取るための配球を逆算しながらリードしていました」と言葉とサインで経験の少ない両投手を自分のピッチングに集中させた。すると、井上は4回を1安打、根岸も5回を2安打に抑えて完封リレー。東海大に先勝(4対0)した寺嶋も「一生懸命に投げてくれました」と笑顔を見せた。

卒業後は社会人でのプレーが内定


 寺嶋がキャッチャーになったのは高校2年秋。新チーム結成時に捕手のポジションが空いたため、当時の監督にコンバートされたのだという。捕手歴は5年ほど。昨年までは感情に波もあったが、桜美林大・藤原悠太郎監督は「打たれても我慢して自分の心をコントロールし、周囲を見ながら冷静に考えて野球をするなど、やっと成熟してキャッチャーらしい振る舞いができるようになってきました」と話しており、「まだまだこれから伸びます」と太鼓判を押す。

 寺嶋はスローイングを長所に挙げ「もともと肩は強かったんですが、守備練習でサードに入って一塁へ送球したり、どんな体勢で捕ってもベースの上へ投げられるようにしてきました」とコントロールを鍛えてきた。

 東海大2回戦でも「六番・捕手」で先発出場した寺嶋は2回裏に一死一塁から二塁への盗塁を刺し、自慢の肩を披露。また、先発したエース・大坪誠之助(4年・土浦湖北高)については「今日は決め球のフォークがあまり落ちていなかったので三振を取りにいくのではなく、カットボールやツーシームで打たせて取るように配球しました」と8回を1失点。ところが、打線は東海大の先発・米田天翼(2年・市和歌山高)の前に3安打で零封され、0対1で敗れてしまった。

 守備では巧みなリードを見せた寺嶋だが、バットではノーヒット。打率は3割を切ったが「もう1試合(東海大3回戦)残っているので、3割は打ちたい」と闘志を燃やしている。

 卒業後は社会人野球でプレーすることが内定している寺嶋。「これからもフィジカル面をもっと頑張って鍛えて、プロへ行きたいです」と貪欲に上を目指していく。

文&写真=大平明