2023−24シーズンの新人王も、心を痛めていることだろう。ビクター・ウェンバンヤマがNBA入り前に在籍していたフランスのプロ球団、メトロポリタンズ・92が破産した。

 現地メディア『Le Parisien』の報道によれば、メトロポリタンズ・92の経営陣は来シーズン、フランスのプロリーグであるLNBに再登録をしない旨を決定したという。数カ月にわたり噂されていた破産の危機はこの決断によって現実となり、フランスのバスケットボールコミュニティは大きな悲しみに包まれている。プレスリリースには「パートナーとの合意に基づき、LNBに対して来シーズンのフランス・プロB選手権への登録申請を行わないことに決定いたしました」と記されており、5月14日の朝にはクラブ従業員にも通知されたようだ。

 メトロポリタンズ・92は、1929年に設立された歴史あるチームである。“メトロ”の愛称からも分かるとおり、同球団は花の都パリを代表する球団として愛され、リーグ戦は優勝経験こそないものの、2019−20シーズンから3シーズン連続でプレーオフ準々決勝に進出、ウェンバンヤマを擁した2022−23シーズンは決勝まで駒を進めており、2012−13シーズンにはフランスカップを優勝している。

 しかし、ウェンバンヤマと昨年ワシントン・ウィザーズに7位指名されたビラル・クリバリーを失った今季は4勝30敗と成績不振に陥り、レギュラーシーズンを最下位で終え、プロBへの降格が決定していた。

 2019年、現役時代にサンアントニオ・スパーズで優勝経験を持つボリス・ディアウを会長に迎え、ブローニュ・ビヤンクール市がこのクラブの経営権を買い取り、再出発を遂げたメトロポリタンズ・92。しかし、市は費用のかかる運営が重荷となり、長らく投資家や新たな受け入れ先を探していたが、買い手や支援者が見つかることはなく、苦渋の決断を下すこととなってしまった。

 市長のピエール=クリストフ・バゲは、メトロポリタンズ・92の倒産にともない、以下の声明を発表している。

「残念なことに、心の痛む決定を迫られました。我々はプロバスケットボールチームとアイスリンクへの財政的支援を維持するために、あらゆる努力をしてきました。しかし今日、我々は未来に向けての選択をしなければなりません」

 フランスは、FIBAランキングでも常に上位を維持するヨーロッパ屈指の強豪国。サッカーやテニスにこそ競技人口は劣るものの、同国はヨーロッパで最初にバスケットボールが伝わった国とされており、パリにはストリートコートも少なくない。そんな文化的土壌があっても、プロスポーツチームの経営は一筋縄ではいかないのだ。

 なお、X(旧Twitter)は5月12日を最後に更新がなく、『Le Parisien』はメトロポリタンズ・92への問い合わせに対して経営陣からの返答はないとしている。

文=Meiji