米大リーグのドジャースが3月21日、大谷翔平選手の通訳を務めてきた水原一平氏を解雇し、国内外で大きく報じられています。報道によると、水原氏は違法なスポーツ賭博で巨額の負債を抱え、大谷選手の口座から少なくとも450万ドル(約6億8000万円)がブックメーカーに送金されたとのことです。

また、米国のスポーツメディア「ESPN」は水原氏は開幕戦後の20日夜、選手たちの前で自らが「ギャンブル依存症」だと告白したと伝えられています。

巨額の負債を抱えても止められない「ギャンブル依存症」や、水原氏がはまったというスポーツ賭博とはどのようなものなのでしょうか。ギャンブル依存症の当事者やその家族への支援をしている「公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会」の代表、田中紀子さんに聞きました。

●わかっているが、自分では止められない疾患

——今回、水原氏が違法なスポーツ賭博に手を染めたと報じられていますが、その負債の大きさに驚愕した人も多いと思います。そこまで巨額な負債を抱えてまでも、止められないものなのでしょうか。

頭では十分、「やめなければいけない」とわかっていたと思います。でもギャンブル依存症は、「やめる」というコントロールが効かなくなってしまう病気です。

また、今回巨額でびっくりしたとみなさんおっしゃるのですが、ギャンブル依存症が原因の横領事件などでは、数億円という規模は実は珍しくありません。自分ではもうやめることができない病気ということをまず理解していただきたいです。

——なぜ、悪化してしまうのでしょうか。

ギャンブル依存症ではない人にとって、なぜ自分でやめられないのかがわかりません。自分でも止められませんし、そういう病気であるという理解がきちんと社会に広まっていません。そうするとどんどん手遅れになって、悪化してしまいます。ですので、悪化を防ぐためには、これは精神疾患であり、普通にある病気であることが理解されることが必要です。

——水原氏がはまっていたというスポーツ賭博は、他のギャンブルと比べてどのような特徴があるのでしょうか。

スポーツ賭博は、スピード感も速いですし、いろいろなスポーツに賭けることができます。スマホを使えばオンラインで24時間365日、賭けられますから、ますます手放せなくなっていきます。ギャンブル依存症になるリスクはとても高いです。

私自身、スポーツはできませんが、それでもサッカーのW杯やオリンピックを見れば興奮します。その興奮とギャンブルの興奮が重なりますので、「二乗効果」があると思っています。

——水原氏は「違法だと知らなかった」とも話しているそうですが…

すごく信ぴょう性が高いと思いました。日本の若者でもスポーツ賭博が蔓延していますが、違法だとわかってない人たちが多いです。アメリカで40州は合法で、水原氏がいるカリフォルニア州では違法だったという話ですので、知らずにはまっていったのではないでしょうか。

——今後、水原氏にはどのような支援が必要になってくるのでしょうか。

一つには、依存症の回復施設に入って、認知行動療法など適切な治療を受けることが必要だと思います。もう一つは、依存症専門のカウンセラーとつながって、カウンセリングを受けることも大事です。

また、ギャンブラーズ・アノニマスという世界的な自助グループもありますので、そうしたところとつながって、1日、1日と賭けをしない日を続けていくことが大切です。