2024年11月までに施行され、フリーランスの取引適正化などを目指す「フリーランス新法」の理解が3割にとどまることが、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会(平田麻莉代表理事)の実態調査で分かった。平田代表は「協会として全国でのセミナー開催に加え、政府にも啓発を求め、施行までに理解度を7、8割まで高めたい」と話している。

●「新法」は取引適正化と働く環境を整備

同協会が3月26日に公表した「フリーランス白書2024」に調査結果が掲載された。

フリーランス新法は2023年4月に成立し、今秋までに施行される。新法のポイントはいくつかある。

①取引条件の明示義務 企業がフリーランスに仕事を発注する時は、契約書やメールなどで、業務の内容や報酬金額などの記録を残すことが義務付けられる。フリーランス同士の取引も対象になる。

②報酬支払い遅れの禁止 事業者は、フリーランスが成果物などを提出した日から60日以内に報酬を支払う。

③フリーランスの働く環境の整備 フリーランスが妊娠や出産、育児、介護と両立して業務ができるように、事業者に必要な配慮を行うことを求める。またセクハラ、マタハラ、パワハラによって働く環境が害されないように、相談対応などの体制整備を求める。

違反した事業者には罰則が適用される可能性もある。

●「育児介護への配慮は助かる」 法律の抑止力を疑問視する声も

協会は2023年10〜11月、フリーランスを対象に調査し、1296人から回答を得た。フリーランス新法を認知している人は83.6%に上ったものの、「名称について見聞きしたことがあるが、あまりよく知らない」と回答した人が49.9%を占め、内容を理解している人は33.7%にとどまった。

自由回答では、新法への期待について次のような声が上がった(カッコは業種)。

「これまでは支払いの遅延に対して強く言うことが難しかった」(芸術系)

「支払いが半年遅れたことがあり、下請け駆け込み寺に相談した際、取引先の資本金が足りず、打つ手がなく苦労したため」(その他職種)

「育児介護の配慮は助かります。子どもがまだ小さくて、体調不良の際の対応に困っているから」(クリエイティブ系)

一方で、新法への期待度が低い人たちからは、法律の抑止力を疑問視する声があった。

「罰金が少なく、抑止効果は期待できない」(映像制作系)

「(略)弱小フリーランスは今後の取引がなくなることが怖くて、発注者に強く出られないのは今後も変わらないように思う。発注者側の意識改革をしてほしい」(ライフサポート系)

また、行政に期待することを複数回答で聞いた。「違法・取り締まり事例の公開」が59.4%と最も多く、「マスメディアでの解説」(49.5%)、問い合わせ窓口の設置や、発注企業向けの説明会開催が続いた。

白書2024では、インボイス制度による影響や、スキルアップや労災保険の加入意向などの調査結果も掲載している。