千葉県銚子市の「銚子電鉄」が4月3日、ホームページと公式X上で、「撮影マナーをなぜ守っていただけないのでしょうか」などと注意喚起をし、Xでの投稿が1万2000回以上リポストされるなど大きな話題となっている。

同社によると、線路脇に設置されていたキロポスト(距離標)が抜き取られて近隣の畑に放置されていたほか、木の伐採や警告看板の位置の移動などの迷惑行為が発生しているとし、 現場での被害状況を示すものとして、抜き取られたキロポストや人が伐採している様子をうつした写真をアップしている。

銚子電鉄は、「警察と連携し、取り締まりを強化せざるを得ません」とし、列車の写真撮影についてマナーを守っておこなうよう呼びかけるとともに、「こういった行為は、犯罪です。絶対におやめください」と警告している。

撮り鉄による迷惑行為は定期的にクローズアップされており、各鉄道会社も注意を呼びかけるなど問題視されている。今回のような行為は具体的にどのような犯罪となるのだろうか。冨本和男弁護士に聞いた。

●少なくとも「器物損壊罪」は成立する

線路脇のキロポストを抜き取った行為は、窃盗罪(刑法235条)または器物損壊罪(刑法261条)の成立が考えられます。

窃盗罪は、他人の財物を窃取した場合に成立する犯罪です。「窃取」とは、占有者の意思に反して財物を自己または第三者の占有下に移す行為ですが、他人の自転車を勝手に乗り回し他の場所に放置した場合にも「窃取」に当たります。

器物損壊罪は、他人の物を損壊した場合に成立する犯罪で、「損壊」というのは、物本来の効用を失わせしめる行為をいい、必ずしも物理的な破壊に限りません。

線路脇のキロポストを抜き取って「近隣の」畑に放置していた点、「窃取」といえるような占有の移転があったと評価できるかどうか微妙ですが、少なくともキロポスト(距離標)の効用(起点からの距離を表示する)を失わせしめているので、「損壊」には当たると考えられます。

敷地内の木の伐採や警告看板の位置の移動についても、木の伐採については文字通り「損壊」ですし、警告看板についても警告が伝わらなくなるわけですから「損壊」に当たると考えられます。

窃盗罪で有罪となった場合には「10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金刑」、器物損壊罪の場合には「3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金もしくは科料」となる可能性があります。

また、これら迷惑行為は民法上の不法行為(民法709条)にも当たり、その結果、運行に支障が出た場合、民事上の損害賠償責任を負う可能性もあります。

【取材協力弁護士】
冨本 和男(とみもと・かずお)弁護士
債務整理・離婚等の一般民事事件の他刑事事件(示談交渉、保釈請求、公判弁護)も多く扱っている。
事務所名:法律事務所あすか
事務所URL:http://www.aska-law.jp