バイクメーカーのカタログやホームページには、一般的な公道用のバイクに混じって「競技用バイク」が一緒にラインナップされています。競技用バイクは、公道用のモデルとどのような点が違うのでしょうか。

競技用バイクって普通のバイクと何が違うの?

 バイクメーカーのカタログやホームページを見ると、一般的な公道用のバイクに混じって「競技用バイク」というモデルが一緒にラインナップされています。さらに詳しく見ると「公道走行はできません」と書かれていて、そのほとんどがオフロードモデルであることがわかります。

 一見すると、外観は公道用バイクとあまり変わらないように見えますが、競技用バイクにはどのような特徴があるのでしょうか。

競技用オフロードバイクは、コースを走るためだけに開発された競技専用の車両です
競技用オフロードバイクは、コースを走るためだけに開発された競技専用の車両です

 競技用オフロードバイクは、オフロードのコースを走るためだけに開発された競技専用の車両です。基本的に公道の走行を想定していないので、新車で購入したときからヘッドライトやウインカー、テールランプなどの灯火類が一切ありません。そのほか、バックミラーやクラクション、スピードメーターやエンジンキーが付いていないのも特徴です。

 これらの保安部品が一切ない理由は、単純に軽量化のため。さらにオフロード走行に特化するために、サスペンションのストロークも公道用バイクよりも長く設定されています。また公道ではないコースを走るだけなので運転免許も不要で、子供でも運転することが可能です。

 なおオフロードレースには、「モトクロス」と「エンデューロ」の2種類があり、同じ競技用バイクでも使われる車両に少し違いがあります。

モトクロスは、未舗装のコースを周回して速さを競うレース(2023年全日本モトクロス選手権北海道大会のIA1クラス)
モトクロスは、未舗装のコースを周回して速さを競うレース(2023年全日本モトクロス選手権北海道大会のIA1クラス)

 まずモトクロスは、未舗装のコースを周回して速さを競うレースです。そのため、モトクロスで使われるバイクは、「モトクロッサー」と呼ばれる車両で加速力やブレーキ性能、旋回性などが重要視されています。限られたコースをいかに速く走るかだけに焦点を当てて作られているため、耐久性や快適性などは考えられていません。

 一方のエンデューロは、山道や林道などの未舗装コースを周回して合計のタイムを競うレースのこと。エンデューロで使われるバイクは、モトクロッサーがベースの「エンデューロレーサー」と呼ばれる車両で、高い耐久性とトータル的な走行性能などが求められます。レース内容によっては公道を走行するケースもあるため、保安部品が取り付けられたモデルもあります。

 それぞれレースの特徴は違うものの、いずれにしても競技用バイクに共通するのは、スピードを重視して作られているのがポイントです。

公道用オフロードバイクとは

 公道用に開発されたバイクは、国で定められたヘッドライトやウインカー、テールランプなど保安部品が最初からすべて取り付けられています。どのようなライダーでも扱いやすいように、快適性や操作性、荷物の積載性など、運転のしやすさを第一に考えて作られているのが特徴です。

公道用に開発されたバイクは国で定められたヘッドライトやウインカー、テールランプなど保安部品が最初からすべて取り付けられている
公道用に開発されたバイクは国で定められたヘッドライトやウインカー、テールランプなど保安部品が最初からすべて取り付けられている

 また、競技用バイクは速く走るためにエンジンの性能を最大限に発揮できるようにセッティングされていて、耐久性などは二の次となっています。そのため、エンジンをばらして点検するなど、公道用バイクよりも高い頻度でメンテナンスが必要なようです。

 では、公道用オフロードバイクはどうかというと、耐久性を高めるためにエンジンの特性を競技用バイクよりもマイルドな設定にして、簡単には壊れないようにしてあります。そのため、少しメンテナンスを怠ったぐらいでは、バイクが故障することはほとんどありません。

 その分、パワーやスポーツ走行などの性能に関しては競技用バイクよりも劣りますが、幅広いライダーにマッチするように街中でも乗りやすい仕様になっています。

公道用オフロードバイクは、幅広いライダーにマッチするように街中でも乗りやすい仕様になっている
公道用オフロードバイクは、幅広いライダーにマッチするように街中でも乗りやすい仕様になっている

 そんなに性能に優れていて速く走れるなら、競技用バイクで「ナンバーを取得して公道を走らせてみたい」と考える人もいるかもしれません。

 そもそも競技用バイクは、レース専用車両として開発されており、保安部品を付けない前提で作られており、さまざま問題をクリアしなければなりません。そのため登録方法を含め、かなり骨の折れる作業が必要になってしまいます。

 さらに競技用バイクは、一般道で想定される信号での停止や、渋滞などのノロノロ運転などのストップ&ゴーの走行を考えられていません。そういった走り方をすれば、エンジンにダメージを与える場合があり、トラブルが発生したり寿命を縮める原因になる可能性があります。

競技用バイクは、簡単にウィリーしてしまうほど圧倒的なパワーがある(2023年全日本モトクロス選手権北海道大会のIA1クラス)
競技用バイクは、簡単にウィリーしてしまうほど圧倒的なパワーがある(2023年全日本モトクロス選手権北海道大会のIA1クラス)

 そもそも競技用バイクは、簡単にウィリーしてしまうほど圧倒的なパワーがあるので、レースのコースではとても走りやすいです。しかし街中の道路を走るとなると、パワーがありすぎて反対に乗りにくくなるので、公道を走るには一切向いていません。

 したがって、競技用バイクは一見すると公道用バイクとよく似ていますが、その中身はまったく別次元のマシンと言えるのです。逆にいえば、市販車の公道用バイクが、一般道ではもっとも快適に走りを楽しむことができるマシンと言えるでしょう。

※ ※ ※

 競技用バイクは公道を走行できない代わりに、圧倒的なパワーとスピードを兼ね備えたスーパーマシンといえます。市販車でのんびりと一般道を走るのも楽しいですが、公道用バイクで物足りなさを感じたら、競技用バイクでレースにチャレンジしてみるのもよいかもしれません。