猫の10才は、人の年齢に換算すると56〜60才。この頃になると、飼い主さんや同居猫に対する行動が変化し、関係性が変わってくることもあるでしょう。そこで今回は、10才の猫に起こりうる飼い主さん・同居猫に対する行動の変化や、それに伴うリスク、お世話のコツなどについて、獣医師の椎木亜都子先生に伺いました。

10才の猫にあらわれやすい「飼い主さんや同居猫に対する行動の変化」

《不安で鳴くことが増える》
猫は10才くらいになると視覚、聴覚、嗅覚などの感覚機能が低下する傾向に。飼い主さんに甘えて鳴くことも多いですが、今まで感知できていたことがわからなくなり、不安が募って鳴くことが増えやすくなります。

《自己主張が強くなる》
長く一緒に暮らしていると、猫は「飼い主さんがどうすれば要求に応じてくれるか」を学習し、してほしいことや不満などを、飼い主さんにわかりやすく伝えてくるようになります。

《絆や信頼が深まって甘えん坊に》
若いときから飼い主さんと暮らしてきた猫の場合は、長い間愛情を注いでくれている飼い主さんを信頼し、安心できる存在だと感じているはず。警戒心が強めなタイプの猫も、一緒に長い月日を過ごしていると、甘えん坊になる傾向があるようです。

《同居猫との関係性に変化が出るケースも》
複数飼いの場合、10才になった猫の体力が低下することなどにより、猫同士の社会的順位が変化し、若い猫との上下関係が逆転するケースがあります。

10才の猫が気を付けたいリスク

《分離不安気味になるリスク》
不安傾向や飼い主さんへの依存度が増すと、飼い主さんがそばにいないときに強い不安を感じる「分離不安」という心の病気の兆候があらわれるおそれが。過剰に毛づくろいをするなどの行動が見られたら、動物病院で相談しましょう。

《攻撃行動が増えるリスク》
10才くらいの年齢で、急に噛んだり引っかいたりするなどの攻撃行動が増えた場合、何らかの痛みや不安などによる防御反応かもしれません。「加齢で性格が変わっただけ」などと自己判断せず、獣医師に診てもらいましょう。

10才の猫に合った対応やお世話


《年齢に応じた適度な刺激を与える》
加齢により活発さは薄れていきますが、10才の猫でも新しい刺激は大切です。隠したフードを探させる遊びなど、コミュニケーションを兼ねた新鮮な刺激で、楽しませてあげましょう。

《応えられないおねだりには毅然とした対応を》
愛猫のおねだりはかわいらしいですが、何にでも応えようとするとますます自己主張が強くなり、応じられないときに困ることになります。無理なおねだりには無視をするなど毅然に対応し、「ダメなこともある」ということを教えてあげましょう。

《声かけやスキンシップで安心感を与えてあげて》
触れられるのが好きな猫なら、飼い主さんのやさしい声かけやスキンシップなどで安心や幸福を感じることができ、心の健康にもつながります。また、愛猫の体に触れることは、皮膚などの異変に気付きやすいというメリットも。

《執拗に鳴く場合は原因の追究を》
執拗に鳴き続ける、「アーオ、アーオ」と大きな声で鳴くといった場合は、何らかの痛みや違和感を訴えているのかもしれません。甲状腺機能亢進(こうしん)症や認知症といった病気のサインであることも考えられるため、一度動物病院で診てもらいましょう。

《新たな猫を迎えるのはなるべく控える》
10才の猫の場合、新たな同居猫を受け入れるのが難しい傾向に。どうしても新しい猫を迎えたい場合は、トライアル期間を設けるなどして慎重に行うようにしてください。

ご紹介したほかにも、10才の猫はストレス耐性や適応力が低下傾向にあるため、大きな環境の変化や強い刺激は過剰なストレスになりやすく、問題行動が増えたり体調を崩したりするリスクが高まります。そのため、引っ越しや模様替えなど、環境を変えることは極力控えてあげるのがベター。ぜひ愛猫との暮らしの参考にしてみてくださいね。

お話を伺った先生/椎木亜都子先生(ペット問題行動クリニックBLISS 獣医師)
参考/「ねこのきもち」2024年3月号『まだまだ元気だけど、いろんな変化が見えてきます 10才猫ってこんなかんじ』
文/東里奈
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。