女性に性行為を強要したなどと週刊文春に報じられたお笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(60)が、発行元の文藝春秋などを相手取り5億5000万円の損害賠償などを求めた第1回口頭弁論が28日、東京地裁で開かれた。文春側の代理人を務める喜田村洋一弁護士が取材に応じ、原告側が認否をはっきりさせない対応にあきれた様子で、時折憤りもにじませた。

 喜田村弁護士は「今日は第1回。予定通り、5分ぐらいで終わりました。向こうが訴状を出して、その訂正申し立て、それから準備書面を出した。それに対して、答弁書と準備書面を出しました」と説明した上で「問題は、裁判所が『認否してください、反論してください』と言ったのに対して(原告側は)『Aさん、Bさんがわからないから反論できない』と言った。どういうことなんでしょうね?」と眉間にしわを寄せた。

 松本側が2人の名前や住所、生年月日、携帯電話番号、LINEアカウントのほか、容姿の分かる写真などの提出を記憶喚起のために求めたことについて、「1回しかやったことがないなら、Aさん、Bさんが誰かなんて関係ない。何年の何月ごろ、六本木のホテルなんとかっていう部屋で、本件記事に書かれてるようなことをやったかどうかというだけの問題」と指摘した。

 その上で「それが、Aさん、Bさんの詳細な情報、写真がないと『週刊文春』の記事内容を認否できないと(原告側は)言う。私も47年弁護士をやっているが、こんなこと言った人は初めてです。名前がわかんなきゃ認否できない? 『そんなアホなことあるかいな』という感じですね」と吐き捨てた。

 原告側が人定を求める理由として「考えられるとすれば、そのころ六本木のホテルで同じようなことをたくさんやっていた。誰がAさん、Bさんだかわからない。だから明らかにしたいというなら(松本側の主張も)わからないでもない」と同様の被害を訴える女性たちが「週刊文春」に続々と登場した背景を踏まえ、皮肉を込めて推測した。

 さらに「Aさんの身元特定をにおわせる嫌がらせがあったり、『虚言』『金目当て』と、今ですらこんなに嫌がらせされているところに、(人定を)求めるということはちょっとおかしいんじゃないですかと思います」と憤る場面もあった。

 今後の戦略については「(松本側が認否もせず)何も言わないんだったら、こちらで立証しますよ、全部」とキッパリ。ただ、客観的な証拠はないという。それでも「基本的にセクハラというのは客観的証拠は普通、ない。私がやったジャニーズ(ジャニー喜多川元社長による性加害問題を巡るジャニーズ事務所と週刊文春の裁判)だってみんなそうだもの。それでもちゃんと(裁判所は)認定はしてくれるわけです」と自信をのぞかせた。