◇13日 J1リーグ第8節 町田1―2神戸(国立)

 神戸に徹底的に分析され、対策を練られた町田が敗れ、8節目にして首位の座から陥落した。立ち上がりは前線からのプレスとシンプルな攻撃で押し込んだが、次第に神戸がペースをつかみ、盛り返していく。すると前半45分、神戸はドリブルでゴール前に進入してきた宮代からのパスを受けた武藤がシュート。このこぼれ球を山内が決めた。

 さらに後半44分、左CKから武藤がゴールを決め、大きな追加点を奪う。町田はパワープレーを仕掛け、前線に5人の選手を並べ、ロングパス、クロスを放り込み、追加時間6分にセンターバックのドレシェビッチがゴールを決めて1点を返したが、反撃もここまで。今季2敗目を喫し、3位に後退した。

 神戸の吉田監督は「(町田は)やはり徹底して角(神戸陣内のコーナー)をとってきて、ロングスロー、コーナーで押してるチーム」とした上で「選手たちが相手チームに対し対策したことを、分析したことをピッチで表現してくれた」と振り返った。その対策のポイントとして「チーム全体がセカンドボールを拾ったり、相手のロングボールに対応したり、やるべきことを全員がやってくれた。セカンドボールということはうるさくいった。そのセカンドボールからどう配球していくかというのも重要。そこから前への意識もチームとして心がけた」と吉田監督。

 基本は4―3―3システムだが、町田にボールを奪われると3トップのうち2人が引き、中盤を厚くしてセカンドボールを回収し、そこから展開して町田の堅い守備を崩しにかかった。また、ゴール前に投げ込んでくるロングスローに対しても2人以上で競りかけ、はじき返した。確かに押し込まれる時間はあったが、崩される場面はほとんどなく、逆にボールを回収してから3トップが流動的に動いて町田DFラインを崩す場面がしばしば見られた。

 やはり力任せのゴリゴリサッカーだけでは上位チームのDFを崩すのは難しい。この日は五輪代表に選出された平河、藤尾を持っていかれた。町田の中で攻撃にアクセントをもたらし、決定力のある2人がいなくなると、町田の攻撃のバリエーションはさらに乏しくなる。ただ、それを差し引いたとしても町田のサッカーは一本調子だ。

 事実、町田は今季8試合すべてで得点を挙げているものの、複数得点を挙げたのは鳥栖、札幌と下位に低迷している相手との対戦に限られている。あとの6試合は1点しか奪えていない。

 敗れた黒田監督は「入りのところではそんなに悪くなかった。チャンスが多く訪れる中でその1本中の1本をしっかりと決めきれなかったことはすごく残念だった。決定機の差、シュートスキルの差が昨年王者を取ったチームとJ1初挑戦のチームの差だったと感じる。この教訓をしっかりと生かし、次のゲームにつなげるということで前に進むしかない」と先を見すえた。

 確かに走力、パワー、フィジカルコンタクトの強さを前面に押し出した町田のサッカーは迫力満点だ。1点を返したこの日のパワープレーはその最たるもの。しかし、これから町田が上位争いに残っていくためには、それだけでは厳しい。せっかくJ1初挑戦で大健闘しているのだ。もう一暴れするためにも、相手の対策を上回るひと味を加えてほしい。それが黒田監督に与えられた今後の課題となってくる。

 ◆大塚浩雄 東京中日スポーツ編集委員。ドーハの悲劇、94年W杯米国大会、98年W杯フランス大会を現地取材。その後はデスクワークをこなしながら日本代表を追い続け、ついには原稿のネタ作りのため?指導者C級ライセンス取得。40数年前、高校サッカー選手権ベスト16(1回戦突破)