◇記者コラム「Free Talking」

 想像を上回るアップデートの速さで、FC東京のFW俵積田晃太(19)が新たな未来を切り開こうとしている。

 プロ1年目の昨季はリーグ27試合出場2得点。さらなる飛躍を誓う2年目に向け今オフは肉体改造にも着手してきた。一回り大きくなった体で始動日を迎え、自信に満ちた表情で「すべてにおいてレベルを上げたいし、昨シーズンの数字よりも上に行きたい。結果にこだわっていきたいし、得点、アシストを量産していきたい」と話した。

 開幕後もここまで順調に試合経験を積んでいる。リーグ8試合出場のうち5試合で先発するなど、試合を重ねるごとに輝きも増している印象だ。

 直近の町田戦は1―2で惜しくも敗れたが、俵積田の突破から多くの好機を演出。その存在感の大きさに、昨季耳にした言葉が現実として近づいていると実感した。

 それを吐き出したのは、昨季までトップでコーチを務め、今季からFC東京U―18を率いる佐藤由紀彦監督だった。この変幻自在のドリブラーを中学時代から指導してきた佐藤監督は、俵積田本人にも「そういう話はしたことはないけどね」と言い、こう明かした。

 「彼自身の存在が一つの戦術になる可能性を秘めている。左肩上がりの戦術を監督が選ばざるを得ないぐらいの選手になってほしい。そのためには絶対的なプレーが求められる。テル(仲川)がマリノスでそうなったように彼が東京でそれを担う選手になってほしい」

 佐藤監督が口にしたのは、チームとして俵積田のドリブルを生かし、それを武器にゲームを組み立てるという少し先の未来のはずだった。それが、町田戦で一気に早まった気がした。試合後、本人もこう口に出す。

 「自分のところからチャンスをつくれている自覚はあった。チームに貢献できているんじゃないかという気持ちにもなれた。そういう部分では良くなっていると思えた」

 そのうち『タワラ』なんて戦術が東京に生まれるかもしれない。さらに、その先には世代別代表経験を持たない、このドリブラーが日の丸を背負ってパリ五輪に立つ未来さえも切り開いているかもしれない。(サッカー担当・馬場康平)