春の古馬女王を決める「第19回ヴィクトリアマイル」(GⅠ・12日・東京・芝1600メートル)でマスクトディーヴァが主役を演じる。昨年の秋華賞は2着ながら、三冠牝馬リバティアイランドを追い詰める強烈な末脚を披露。府中の長い直線は現役屈指の切れ味を発揮できる絶好の舞台だ。絶好調のモレイラを再び背に初のGⅠタイトルを狙う。

 三冠牝馬を追い詰めた末脚で頂点まで突き抜ける。阪神牝馬Sを制したマスクトディーヴァが秋華賞以来、2度目のGⅠ挑戦で頂点を狙う。その秋華賞ではリバティアイランドを上回る上がり3F33秒5の末脚で2着。同世代の最大のライバルがいないここは、たとえマイルGⅠ馬ら強敵相手でも負けられない戦いだ。

 春の女王に君臨するため、2走続けてマイルを走るなど距離対応も万全だ。東京新聞杯は出遅れが響いて6着に敗れたが、前走の阪神牝馬Sで巻き返してマイル適性を証明。それも、これまでの後方待機策ではなく好位から抜け出す競馬ぶりに、辻野調教師は「前走はそこまでつくり込んでいない中、内容の濃い競馬。次に向けて収穫の多いレースでした」と期待を膨らませる。

 師の言葉通り、確かな上積みを感じさせたのが1週前追い切りだ。栗東CWでの3頭併せで最後方から追走す形で、馬なりのまま5F66秒9―37秒9―11秒5で、ブリックワーク(3歳未勝利)と同入、ロードオルデン(5歳2勝クラス)に1馬身先着した。内を通ったとはいえ、重たい馬場でも軽く促されるだけで瞬時に反応し、仕上がりの良さをアピールした。

 「しっかり負荷をかける中でフォームも良く、思った以上に動けていました。いい方向に向いています」と師。課題のゲートも毎週、入念に駐立の確認をしており「穏やかな気持ちでこなしてくれています」と2走前と同じ轍(てつ)を踏むつもりはない。

 まだ完成は先。それでも師は「中身が入り、昨秋よりも一段階上がったと思います」と確かな成長を強調する。馬名の由来は”仮面の歌姫”。名手モレイラを背に、未完の大器が勝利の凱歌(がいか)を響かせる。