◇14日 大相撲夏場所3日目(東京・両国国技館)

 今場所も新入幕力士から目が離せない。新入幕の欧勝馬(鳴戸)がリーチを生かして友風の左上手をつかむと、出し投げからの送り出し。「何も考えてないです。目の前の一番に集中して」と無欲の挑戦が3連勝を呼び込んでいる。

 先場所は尊富士が110年ぶりの新入幕V、先々場所は大の里が終盤まで優勝争いを演じた。欧勝馬も場所前は「新入幕で2人が活躍したので自分にもチャンスあるのかな」と話していたが、場所に入ると「気にしてないです」。気負いは全くない。

 母国モンゴルで十両の取組は放送されない。生中継は幕内から。それも励みになっている。「家族が見ている。勝っている姿を見せたいです。元気な姿を見せたい」。さらに、今場所の千秋楽には母と弟を日本に呼ぶ計画を立てている。

 「お母さんは日本に来たことがない。初めてです。楽しくあちこち行ければ」と初来日後の予定を思い描いている。

 その中に父プレブスレンさんはいない。2021年の11月場所(福岡)で入門する直前の同年8月に亡くなった。「急にだった。急に心臓が止まって」。欧勝馬は日体大で学生横綱のタイトルを獲得。大器と呼び名の高い息子のデビューを父は「いつ? いつ?」と心待ちにしていたという。

 「プロで活躍する姿を見たかったんだと思います。それを見られなかったんで…」。亡くなる前の2年間は会うこともできず、「電話したいなって思っていたけど、できなくて」。父は電話が通じない場所にいたため声を聞くこともかなわなかった。亡き父への思いを白星に乗せて届けていく。