◇無敗2冠列伝 ①シンボリルドルフ

 「第91回日本ダービー」(GⅠ・26日・東京・芝2400メートル)で、3戦3勝の皐月賞馬ジャスティンミラノが無敗でのダービーとの2冠を目指す。過去、無敗で皐月賞、ダービーの2冠となった馬は7頭いる。グレード制が導入された1984年以降は5頭で、もちろん名馬ばかり。その5頭の無敗2冠達成を5回に分けて振り返る。1回目はグレード制導入1年目の84年に現れた、皇帝シンボリルドルフ。無敗2冠どころか、史上初の無敗でクラシック三冠(43年クリフジは無敗でダービー、オークス、菊花賞を制覇)に輝いた名馬である。

 馬名の由来と、その強さから”皇帝”と呼ばれ、ファンから愛されたのがシンボリルドルフ。初めて無敗でクラシック三冠制覇の偉業を成し遂げた。デビューは3歳夏の新潟芝1000メートル。同じくのちに無敗でダービーを制して二冠を果たしたミホノブルボンも芝1000メートルのデビュー。新馬戦のルドルフはスタート直後、鞍上が出して行って中団を奪うと、直線は内からスルスルと抜け出しての快勝劇。前評判通りの強さで白星発進だった。

 3歳時に3戦3勝。GⅠの朝日杯3歳Sをパスし、翌年は弥生賞から始動。この時18キロ増の馬体重で出走して快勝したが、続く皐月賞は難しい戦いとなった。前哨戦の弥生賞で外傷を負い、22キロ減での出走。それでも”皇帝”は強かった。直線でビゼンニシキと激しくぶつかり合う(鞍上の岡部は騎乗停止の処分)ほどの叩き合いを制し、走破時計2分1秒1は、当時のコースレコード。名実ともに世代最強の座をつかんだ。

 次の大一番、日本ダービーでは名言を生んだ。最強のライバルであるビゼンニシキとの一騎打ちムードに拍車がかかったものの、相手は14着大敗。ルドルフも向正面でペースを上げようと鞍上の手綱が動いたが、無反応のルドルフに場内はどよめく。それでも直線で豪快に末脚を伸ばしての偉業達成となり、レース後に岡部幸雄は「ルドルフに競馬を教えてもらった」と語り、名手のこの一言がルドルフのすごさをより高めるエピソードとなった。