「タルトメッセ」のタルトや焼き菓子いろいろ。

「いくたまさん」と呼ばれ親しまれている大阪府大阪市天王寺区の生國魂神社。北東に、タルト専門店「タルトメッセ」はあります。

 オーナーパティシエのマダムヨシエこと、小川美枝さんは、1942年生まれの81歳。今も毎日のようにお店に立ち、タルトを焼いています。

 お店に入ると、タルトを焼く香ばしい匂い。店内には窓際のカウンター席と奥にテーブル席があり、タルトをドリンクとゆっくり味わうのにぴったりです。

 入り口すぐのケースにその日のタルトが並んでいて、その奥では、小柄なマダムヨシエさんがタルト作りをする姿が。


入り口すぐに、本日のタルトが並ぶショウケース。「洋梨のタルト」は最上段に。カット 600円、プチホール 1,380円、小ホール(直径16センチ) 2,780円、大ホール(22センチ) 5,200円。

 まずは、タルトいろいろを紹介しましょう。

 ケースの最上段に大中小3種類とカットタイプが並ぶ「洋梨のタルト」は、ここの看板商品。

 イートインでは、タルト生地を使って焼かれた小さなクマのクッキーと生クリームが添えられていて、お皿を前に、思わず笑みがこぼれます。


「洋梨のタルト」600円。イートインでは、タルト生地のクマのクッキーと生クリームを添えて。ポットサービスの「野生のルイボスティー」830円。コーヒーは500円。

 小麦粉を極力少なくして薄く焼いた、口の中でほどけるタルト生地と、砂糖を控えたまろやかなオリジナルの特製クリーム、洋梨の風味が一体となって極上の味わい。ほろほろ、さくさく、軽やかでいてしっとり。一度食べたらやみつきになるおいしさ。

 飲み物は、紅茶や野生のルイボスティーが、やさしい味わいのタルトによく合います。

オリジナルレシピの「洋梨のタルト」を


上から時計回りで「洋梨のフルーツドルチェ」900円、「いちごのチーズタルト」680円、「ミックスフルーツチーズタルト」680円。

「洋梨のフルーツドルチェ」は、洋梨のタルトに季節の果物いろいろをトッピング。様々なフルーツのおいしさを堪能できる贅沢な逸品。

 チーズクリームをベースにしたのが「いちごのチーズタルト」と「ミックスフルーツチーズタルト」。

 チーズタルトは、チーズ、サワークリーム、薄いタルト台の3層。オーブンに3度出し入れして、最後にイチゴやフルーツを軽く焼いて出来上がり。


上から時計回りで「フレンチカップの季節のフルーツドルチェ」900円。「スクウェア/バラのオレンジチーズケーキ」680円、「スクウェア/いちごのチーズタルト」。680円。

「フレンチカップの季節のフルーツドルチェ」は、まるでレストランのデザートのよう。様々なフルーツとクリーム、生地の一体感を贅沢に味わえます。

 その名のとおり四角い「スクウェア」は、「いちごのチーズタルト」と「バラのオレンジチーズケーキ」の2種類。花の形にしたオレンジ、赤いいちごが愛らしい。3層にした独自のタルトに果物の花が咲いたよう。「手に持って、かぶりつく感じで食べてほしい」とマダムヨシエさんはにっこり。

「洋梨のタルトは、私のオリジナルレシピです。22センチの大ホールに卵は1個。砂糖はたった75グラム。ブランデー、白ワインが入っていますが、180℃の高温で1時間焼いてお酒は飛んでいますので、子供から年配の方まで、安心して召し上がっていただけます。クリームに小麦粉は使っていません。甘みは洋梨のコンポートのみ。クリームにはサワークリームが入っています」。マダムヨシエさん自慢の一品なのです。

「子供のおやつにとタルトを作り始めたんです。当時、タルトは憧れのお菓子だったから。でも、ホテルのシェフの本を見て作っても、パサパサでうまくできない。何度も何度もやっているうちに、おいしくできたの。なので、全くの独学(笑)。お砂糖も卵もバターもほんの少ししか使わないから、とても軽い味わい。ワインにも合いますよ」

 鰻谷にあったイタリア料理店「ピエトラサンタ」から「卸してほしい」と頼まれて、以来、洋梨のタルトとレアチーズケーキはずっと作ってきたのだそう。7坪の小さなお店をオープンしたのは1996年。現在の場所に2003年8月に移転してからも、ずっと変わらぬレシピで缶詰の洋梨を使って作っていると言います。


洋梨をぎっしり並べてオリジナルのクリームを盛る小川美枝さん。

「まず、タルト台を1度焼きます。次に、オリジナルの特製クリームを流し入れて、洋梨のコンポートを並べ、その上に、さらにオリジナルクリームを流して、約40分〜1時間焼きます。洋梨のタルトはこれで出来上がり。他のお菓子もオーブンから出したり入れたり。4度焼きしているものもあります」

 手間をかけたここだけのタルトなのでした。


「バースデータルト」小ホール(直径16センチ)5,200円。

「バースデータルト」は、そんな洋梨のタルトの上にカスタードクリームと生クリーム、さらに季節の果物をトッピング。毎年、注文するお客様もおられるそう。

 他にも、和歌山の白桃のタルト、喜界島のパッションフルーツのタルト、桃とチェリーのクランブルパイ、山形の佐藤錦のチーズケーキ、無農薬バナナとブルーベリーのタルト……。さらに、アップルマンゴー、無農薬レモン、野生の桑の実、イチジクなど、季節の果物を使ったタルトが季節ごとに次々に登場します。

「手に入る限り、無農薬のもので」とマダムヨシエさんは言います。

 30年間変わらぬレシピのもうひとつのケーキが「マダムフロマージュ」。オリジナルのカスタードが中に入っている、さわやかな酸味、あっさりした味わいのレアチーズケーキです。


「ゴルゴンゾーラと有機玄米味噌のタルト」1カット680円。

 そして、マダムヨシエさんが「大好きな大人のケーキ」と言うのが、「ゴルゴンゾーラと有機玄米味噌のタルト」。「無農薬栽培の大豆を使った玄米味噌とゴルゴンゾーラチーズが、このケーキの要。ワインと召し上がってみてください」と勧められました。味噌のコクとチーズの風味がワインにマッチ。トッピングのドライイチジクとトマトがアクセントです。


「ゴルゴンゾーラと有機玄米味噌のタルト」は、グラスワインと合わせるのがオススメ。

「実家がカフェを営んでおり、カクテルを出していたんです。学生時代から手伝っていて、お酒についての知識も少しありました。お菓子にブランデーなどのお酒を使う理由もよくわかる。私自身お酒が好きなので、甘くないタルトやマドレーヌ、クッキーもいろいろ作っています」とマダムヨシエさん。

 入り口を入って右手の棚に、さりげなく並んだクッキーやマドレーヌ。黒胡椒や山椒、味噌を使ったものがあって、お酒を好む方や甘いものが苦手な方にもおすすめです。お店では、ワイン会も開催されているとか。

「次は、何を作ろうかしら」とマダムヨシエさん。「良い材料が手に入ったら、すぐにお菓子を作りたくなるし、お客様とおしゃべりをしてふと思いついたり。姪が天満でベイクショップを始めたんですよ。私もまだまだ負けていられない」と、ますます元気いっぱい、意欲的。

タルトメッセ


外観。

所在地 大阪府大阪市天王寺区生玉前町2-11
電話番号 06-6774-0804
営業時間 12:00〜19:00、日曜・祝日〜18:00
定休日 月・火曜
http://www.nau-now.com/cake/taretmessa/

文・撮影=そおだよおこ