日曜夜8時、大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合)の初回視聴率が歴代最低の世帯12・7%でスタートし、その後も上向く気配がない(ビデオリサーチ調べ、関東地区:以下同)。その影響か、民放の裏番組では鎬を削る闘いが一層激しくなっている。

 かつてこの枠は「世界の果てまでイッテQ!」(日本テレビ)の独壇場で、“バラエティの王様”と呼ばれていたが、ここ数年は「ポツンと一軒家」(テレビ朝日/朝日放送テレビ制作)の一人勝ちが続いていた。民放プロデューサーは言う。

「3月3日の放送で大きく順位が変わりました」

 3月3日夜8時、民放各局が放送した番組は以下の通りだ。

●日テレ「世界の果てまでイッテQ!」(19:58〜20:54)
●テレ朝「ポツンと一軒家」(19:58〜20:56)
●TBS「バナナマンのせっかくグルメ2時間SP」(19:00〜20:54)
●テレビ東京「密着!JR24時 山手線から新幹線まで激レア(秘)映像大公開SP」(18:30〜20:50)
●フジテレビ「千鳥のクセスゴ!2時間SP」(19:00〜21:00)

 内村光良(59)、所ジョージ(69)、林修(58)、バナナマン(日村勇紀=51、設楽統=50)、そして千鳥(大悟=43、ノブ=44)と、テレ東を除いた各局がMCに人気タレントを揃えているのは激戦区の証だ。

「3日の放送では、『イッテQ』が個人視聴率で8・0%を記録して同時間帯でトップに。この週は『ザワつく!金曜日』(テレ朝)と並んで、民放の全番組の中で個人視聴率1位になりました。コア視聴率(13〜49歳の個人視聴率)で見ても『イッテQ』は7・6%で、2位の『ぐるぐるナインティナイン』(日テレ)に1ポイントの差をつけ単独1位を奪還しました」

 もっとも、世帯視聴率は「イッテQ」の10・6%に対し「ポツンと一軒家」は12・5%。同時間帯の世帯視聴率では、相変わらず「ポツンと一軒家」がトップだ。

世帯視聴率では計れない

「『ポツンと一軒家』は世帯20%を超えていた頃もありましたし、個人でも22年から『イッテQ』を凌駕し、テレ朝のNo.1番組でした。ところが、今や世帯視聴率は昭和・平成の時代との比較指標になるだけで、テレビ局の営業的には意味をなさなくなっています。それに代わる個人視聴率ですら指標として当てはまらなくなってきています」

 最近は「購買意欲の高い13〜49歳の個人視聴率」、いわゆるコア視聴率が重要な指標になりつつある。

「高齢者ばかりが見ているようなコア視聴率が取れない番組にはスポンサーがつかないので、商売にならないのです。そして、TVerのような広告付き無料配信の視聴者数も新たな指標となってきています」

 ならば、3月3日の日曜夜8時の番組をコア視聴率で見るとどうなるか。

●「世界の果てまでイッテQ」7・6%
●「ポツンと一軒家」1・5%
●「バナナマンのせっかくグルメ」4・0%
●「千鳥のクセスゴ!」4・0%

「ちなみに、大河『光る君へ』のコア視聴率は2・3%ですから、『ポツンと一軒家』は低調と言われる大河よりも取れていないことになります」

 指標が変わった結果ではないだろうか。

1コンセプトの宿命

「最近の『ポツンと一軒家』は世帯視聴率で見ても20%どころか10%台前半が続いていますから漸減傾向にあります。やはり1コンセプトもののバラエティ番組の宿命と言っていいと思います。ネタ切れとマンネリには勝てないのです」

 それは歴史が証明するという。

「『ポツンと一軒家』の時間帯は大阪の朝日放送の制作枠で、かつては『大改造!!劇的ビフォーアフター』が放送されていました。この番組にも同じことが言えます」

 古い家を大改造して住みやすくするのはもちろん、家族の絆まで解決する番組は、2002年にレギュラー放送が始まり、特番として放送された06年からの3年間を挟み、16年まで放送された。以降は特番として不定期に放送されている。

「『ビフォーアフター』は03年3月に世帯17・2%を記録し、同年にはサザエさんの声を務める加藤みどりのナレーション『なんということでしょう!』も含め新語・流行語大賞のトップ10にも選ばれました。レギュラー終了の理由は、東日本大震災や東京五輪の建設工事の影響で、番組で扱う物件の工期が遅れたためということでしたが、視聴率低下も原因でしょう。実際、16年11月27日の最終回は世帯7・9%で、裏の『イッテQ』の世帯20・8%に惨敗しました」

 これも1コンセプトものの宿命なのか。

ポツンと一番組

「家のリフォームというコンセプトだけで、中断期間を含めても14年はよくもったと思います。同様に、名バラエティと呼ばれ一世を風靡した『伊東家の食卓』(日テレ)は9年半、『嗚呼!バラ色の珍生!!』(日テレ)は6年半、久米宏アナの『ぴったしカンカン』(TBS)は10年半、関口宏の『クイズ100人に聞きました』(TBS)は13年半といった具合です。やはりGP(ゴールデン・プライム)帯では10年が限界かもしれません」

 もっと長く続いているバラエティ番組もあるが……。

「『笑点』(日テレ)を筆頭に、『新婚さんいらっしゃい!』(テレ朝/朝日放送制作)、『朝だ!生です旅サラダ』(同前)のような長寿番組は、土日の朝昼など広告料が安い時間帯に放送されているからです。各局が鎬を削るGP帯ではそうはいきません」

 ちなみに、「ビフォーアフター」のMCだった所ジョージを残して同じ枠でスタートしたのが「人生で大事なことは○○から学んだ」で、この番組の一企画から派生したのが「ポツンと一軒家」だ。

「17年に不定期特番として始まり18年10月にレギュラー化した『ポツンと一軒家』ですが、放送期間はまだ6年半、飽きられるのは早い気もします。とはいえ、大河がパッとしない中、民放でこの番組だけ数字が落ちているのは元々が別番組の一企画、つまり1コンセプトという問題があるからでしょう。しかも、コア視聴率では見る影もない。日曜夜8時の枠では『イッテQ』はじめ『せっかくグルメ』『クセスゴ!』も様々な要素を取り込んだ番組作りをしています。そんな中、1コンセプトの『ポツンと一軒家』は“ポツンと一番組”になろうとしています」

デイリー新潮編集部