少なからぬテレビの制作スタッフ──特にバラエティ番組の関係者は──3月3日、フジテレビ系列で放送された「ワイドナショー」を注視したという。一体、何が目的だったのか。発端は前週の2月25日に遡る。

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 バラエティ番組の制作スタッフは「2月25日に放送された『ワイドナショー』で、藤本敏史さんの復帰問題が取り上げられたのです」と言う。

「藤本さんは昨年10月、都内で乗用車を運転中、当て逃げ事故を起こしました。藤本さんは芸能活動を自粛。今年1月、東京簡裁から罰金2万4000円の略式命令を受けました。そして翌2月23日、所属事務所の吉本興業が活動再開を発表し、25日の『ワイドナショー』も活動再開を報じました。コメンテーターのヒロミさんが『アイツそんなヤツじゃないんですよ』と改めて庇うなど、彼の再出発を応援する番組内容でした」

 この放送が終わると、テレビ業界の中では、とある“情報”が、猛スピードで広まっていったという。

「藤本さんが翌週の3月3日に放送される『ワイドナショー』に出演し、テレビ業界に復帰する、という情報が広まったのです。確かに『ワイドナショー』は、不祥事で活動を自粛していた著名人が、復帰第一弾として出演する番組としても知られています。藤本さんの再出発には、まさに打ってつけでしょう。オンエアの当日、多くの関係者がテレビの画面を凝視しました。ところが結果は、まさかの出演なし、だったのです」(同・スタッフ)

失われたメリット

 これまで出演した“やらかし著名人”を振り返ってみると、前園真聖、ベッキー、乙武洋匡、TKOの木本武宏と木下隆行──といった顔ぶれが浮かぶ。

「藤本さんにとっても絶好のチャンスだったことは言うまでもありません。それを見送ったのは、番組だけの判断ではないでしょう。止めたのはフジテレビか、吉本興業だと思います。背景として、松本人志さんの不在が挙げられます。これまで多くの“やらかし著名人”が『ワイドナショー』を再出発の場として選んだのは、松本さんがイジることで、多くの視聴者が『これで一応、みそぎは済んだ』と受け止めたからです」(同・スタッフ)

 松本がいるからこそ、「ワイドナショー」に出演するメリットがある。それが不在となると、吉本興業とフジテレビの双方で「出演させる意味はあるのか」という議論が起きた可能性があるという。

「吉本は、『松本不在の番組に出演しても、“やらかし芸人”の復活番組としては機能しない』と判断したのかもしれません。はたまたフジが『松本が不在では藤本も活きない。視聴者の反発も予想され、炎上のリスクがある』と懸念したのかもしれません。さらに『ワイドナショー』は、性加害問題で松本さんが自ら出演を発表すると批判が殺到、フジ上層部の判断で撤回されたこともありました。あの時の反省から、不謹慎と批判されそうな事案は、とにかく回避することを決めた可能性もあります」(同・スタッフ)

危機管理と番組劣化

 松本の性加害問題が発覚する前なら、間違いなく藤本は出演していたという。そして松本にイジられることで視聴者に再出発を印象づけた──。

「危機管理の観点からは正しい判断だったかもしれません。松本さん不在の『ワイドナショー』にとっては、藤本さんの出演は荷が重かったとも言えます。ただし、テレビ業界の鉄則ですが、あまり守りに入りすぎると、必ず番組は劣化が始まります。これまで多くの話題を提供してきた『ワイドナショー』ですが、藤本さんの出演を回避したことで、今後にかなりの不安を覚えました」(同・スタッフ)

デイリー新潮編集部