お笑いコンビ「天竺鼠」の川原克己(44)による初の冠番組となる「天竺鼠の川原の」が3月27日に始まる。地上波放送における冠番組だが、制作・放送するのはテレビ埼玉。鹿児島県出身で、埼玉県には縁もゆかりもなかったはずの川原に白羽の矢が立った理由とは…。

他では見たことない

 番組はテレビ埼玉の開局45周年を記念した新番組。社内の番組企画公募に約50企画が集まった中から選ばれた。編成局の諸星和義編成局長によると応募したのは、同社東京支社の営業部員。川原の大ファンだといい、「番組を一緒に創りたい」との思いをしたためた文章を川原にダイレクトメールしたところからスタートしたという。

 番組発表会見で「一言お願いします」といわれ、「こんにちは!」と一言だけ発言して終わらせようとし、司会者に「二十言ぐらいお願いします」といわせてしまうなど、ひたすらボケ倒す芸風の男が、縁もゆかりもない場所を街ブラして、果たして番組が成り立つのか、という危惧がありそうなものだ。川原自身も「今までにもありがたいことに、『川原さんのファンなんで川原さんで企画をやりたい』というオファーはあったけど、(局の)上(層部)に話を持っていくと、ことごとく『やめとけ』と言われて、ダメになっていた」と笑いながら明かす。

 テレビ埼玉は結果的にその企画を通したわけだが、

「他では見たことのない番組にチャレンジするのがテレ玉らしいのではないか」(諸星部長)

 というから、テレ玉の懐の深さ?も恐ろしい。

注意され「萎縮してた」

 川原自身はすでに番組最初のロケを、同県内唯一の村である東秩父村で終えた。

 これまでとの違いは「本当に(一人で自分以外は)誰もいないんですよ」という点にあるという。

「特番などで一人のロケはよくあったんですが、ゲストにツッコまれたり、スタジオからツッコまれたり」

 これまでのロケ番組では川原の言動を見たスタジオゲストなどから「それ、もうやめとけ」だの「それはさっき聞いたやろ」「こいつアカン」といった言葉が飛ぶのが常だったという。

「ツッコミってかっこよく言いましたけど、注意されてた。せっかく頑張って楽しくやってるのに、注意されてどんどん萎縮してたんです」

 そんな状態になじんでいたからこそ、「誰もツッコミがいない中でロケをやったのは初めて。やってて違和感があった」というほどだ。

「(テレ玉の上層部が)『おお、いいね!』なのか『仕方ない…』なのか分からないが、本当によく(企画を)通してくれた」というのは偽らざる本音なのかもしれない。

埼玉県民はイジられ好き?

 川原は「埼玉の良さを引き出して、という番組(に合うの)は、絶対僕じゃないと思う。埼玉の人って頭おかしいのかなと思った。攻めてるな〜埼玉、という感じ」と笑わせる一方で、「どんな人がいるのか楽しみ。埼玉ならではのことが起きるのも楽しみ」と、この先の埼玉県内練り歩きに腕を撫す。

 近年、映画『翔んで埼玉』の公開で、埼玉県民のイジられ好きな県民性が認知されてきた感もあるが、「イジッたけど手応えなかったですね。 イジッてほしそうだからイジッたのに、『わぁ、うれしい』じゃなくてどんどんスカされてる感じ。でもこれからのロケではどんどんイジり倒していきたい」。イジられ好きの県民性を引き出せるか見ものだ。

実はあった縁・ゆかり

 埼玉県とは「縁もゆかりもない。これでやっと縁ができた」と強調していた川原だが、実は毎年、関東屈指のパワースポットともいわれる奥秩父の三峯神社に、神社好きの 小藪千豊とともに通っているという。

 秩父市中心部からでも車で1時間近くかかるだけに、「東京から向かうとなると、ヨシ行くぞ、と思わないと向かえない。でもロケで行けたら時間と交通費が浮く」とここでもボケ倒す。

 さらに、これまで自己紹介で時折使っていたボケが「どうも〜、浦和レッズの皆さんです」というもの。番組の前後とも全く脈絡がなくても使っていたボケだが、埼玉県内にプロスポーツチームがたくさんあり、その中に浦和レッズもあると教えられ、「ここにつながるんや」といたく感激した様子。「番組内で違和感を見せるのが好き。浦和レッズの選手を引き連れて街ブラすれば、『これは今何を見せられているのか』と違和感があるはず」と、ボケとも本気ともつかない構想までぶち上げた。

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「天竺鼠の川原の」は27日から毎週水曜午後11時からの30分番組。TVerでの配信のほか、テレビ埼玉の番組公式ユーチューブでの未公開カットの配信も予定されている。

デイリー新潮編集部