公務員選択が激減

 春の進学、就職シーズンを迎え、新生活をスタートさせた若者たち。そんな中、東大生の就職先に変化が見られるという。かつては「東大卒=官僚」というイメージが強かったが、近年は官僚が敬遠され外資系コンサルへの就職が顕著になってきているという。

 東大が公表している「学部卒業者の卒業後の状況」を調べると、10年前の14年度(平成26年度)は卒業生3129人のうち公務員は170人だったが、最新の23年度(令和5年度)は同3094人中、公務員を選んだのは116人。大学院修了者では159人から105人となっている。まさに激減といっていい数字だ。

 東京大学新聞のまとめによると、23年に東大を卒業・修了した学部生と院生を合わせた就職先トップ10は1位東京大学(146人)、2位アクセンチュア(57人)、同ソニーグループ(同)、4位楽天グループ(47人)、5位日本IBM(34人)、6位野村総合研究所(32人)、7位マッキンゼー・アンド・カンパニー(30人)、8位中外製薬(29人)、9位東京大学医学部付属病院(27人)、10位NTTデータ(26人)、同リクルート(同)、となっている。省庁の中でも人気が高い外務省は24人でトップ10に入れなかった。

 教育ライターがこう話す。

「かつては、東京大学出身者の多くが官公庁に就職していましたが、今は官僚志向の学生が年々、目に見えて減っています。東大卒業後は国家公務員という世間のイメージはすっかり過去のものになりました」

 官僚志向が減っている背景にはさまざまな要因があるだろう。近年、東大生の就職先が多様化しており、官公庁以外の民間企業や外資系企業、ベンチャー企業、国際機関やNGOなどへの就職も選択肢として増えている。国家公務員総合職は安定した待遇や福利厚生が魅力だが、一方で長時間労働や激務などの問題も指摘されている。社会的な課題やグローバル化の進展に伴い、他の分野でキャリアパスを築いた方がより意義があると考える学生が増えているのだ。

激務、深夜労働を回避

 ただ、そのような就職先の多様化の中でも近年、外資系コンサルティング会社の人気が高くなっている。アクセンチュア、マッキンゼーに加えて、ランキング12位にPwCコンサルティング(25人)、13位にEYストラテジー・アンド・コンサルティング(24人)が入っている。一体、どういうわけか。

 就職を控えた東大生がこう説明する。

「国家に貢献したいという思いから官僚を目指す学生もいますが、私は絶対になりたくありませんね。深夜まで働かされたり、中年職員が上にたまっていて昇進も遅いと聞きます。何より国家公務員総合職という仕事がキャリアアップにつながらないという現状があります。いったん官僚になってもすぐ海外に留学し、その後5年勤めて学費返還義務が消えてから外資系コンサルに転職する人もたくさんいます。

 外資系コンサルは専門的なビジネススキルが身に付きますし何より給料が高い。もちろん官僚並みに仕事はキツイでしょうが、今の東大生は若いうちからガンガン稼いでリッチな生活を送りたいというマインドが強いです。楽天グループやリクルートなども人気ですが、あくまでも腰掛け代わりで将来、外資系コンサルへの転職を狙っている人ばかりです」

 アクセンチュアは世界最大級のコンサルティング企業で、本社はアメリカのシカゴとニューヨークにあり、社員数は約73万人、日本は約2万3000人というスケールだ。企業のデジタル化やイノベーション、ビジネスの効率化などに関するアドバイスやソリューションを提供し、クライアントのビジネス成果を向上させることを主な業務としている。

 給与は、役職や経験、地域によって大きく異なるというが、日本では高度な専門知識やスキルを持つ従業員に対して高い報酬を支払っており、入社3年から5年で800万円を超え30歳ごろには1200万円に届く社員もいるという。「東大生自身、裕福な家庭で育ち、多くは学費の高い私立中高一貫校や鉄緑会など東大専門塾にも通っているので、勉強が大変とはいえリッチな生活に慣れています。給料が高い外資系コンサルが人気なのも当然です」(前出の教育ライター)

 富裕層が富裕層を再生産する。日本の格差社会は広がるばかりといえそうだ。

デイリー新潮編集部